矢野村強盗殺人事件

矢野村強盗殺人事件の詳細

矢野村強盗殺人事件は、1947年5月23日の夜、当時の兵庫県赤穂郡矢野村（現在の相生市）で発生した、残虐な強盗殺人事件である。この事件は、地域社会に大きな衝撃を与えた。事件当夜、農家に住む35歳の妻が防ぎようのない侵入者によって命を奪われ、その後、37歳の夫も同様に襲われ、二人が無惨に殺害される事態が起こった。

事件の発生

事件は、その夜の静かな時間に始まった。妻が目を覚ますと、床がきしむ音が響いてきた。恐怖を感じた彼女が叫び声を上げると、すぐに男が斧を持って襲いかかり、彼女は尊い命を失ってしまった。この叫び声で夫も目を覚ましたが、彼もまた男に斧で襲われて命を落とした。その後、侵入者は57点に上る衣類を盗み取り、静寂の中に姿を消した。

逮捕と裁判の経過

事件発生後まもなく、兵庫県の相生警察署は二人の男を逮捕した。彼らは兄弟であり、事件に関与した内容については、兄は供述が二転三転していたものの、主導したのは弟であるとの認識が一致していた。兄は神戸地裁姫路支部で無期懲役の判決を受け、一方、弟は死刑判決を受け入れることとなった。兄は判決に控訴することなく神戸刑務所で服役し、弟は大阪拘置所行きとなった。

兄が主犯との主張

事件からしばらく経った後、弟の姉が大阪拘置所を訪ねた際、弟は兄が主犯であると告白した。弟によると、強盗の意図で兄に誘われ、古い斧を持参して農家に押し入った。そして、兄が襲った後、弟は兄の命令で斧を処分し、その時点から全ての罪をかぶることを決意したという。弟は逮捕された際、報告する内容を兄に伝えるよう提案した。

弟はその後、自らの主張をもとに控訴したが、控訴審では兄が「弟が殺した」と証言した。1948年7月、大阪高裁は弟の控訴を棄却し、弟はさらなる上告を行ったが、1949年7月に最高裁が原判決を破棄し、差し戻したものの、大阪高裁で弟は再度死刑にされることとなった。1951年2月、最高裁は彼の上告を棄却し、死刑が確定した。

再審請求とその結果

弟は再度の再審請求を行い、その際に1952年6月に兄が自ら主犯であると認める手紙を残していた。この手紙は再審請求に提出されたが、1952年11月に大阪高裁は「証拠価値が比較できないため、明確な証拠とは認められない」として却下された。

1953年に弟は、大阪拘置所にて死刑が執行されることとなった。この事件は、その後の日本における刑事事件の取り扱いや再審制度に影響を与える要因ともなった。

参考文献

• - 村野薫「戦後死刑囚列伝」、洋泉社、1995年、ISBN 4896911792。

この事件には多くの議論や疑問が残されており、今なお歴史の中で語られ続けている。

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