矢野目信号場

矢野目信号場

矢野目信号場（やのめしんごうじょう）は、福島県福島市北矢野目に所在する、東日本旅客鉄道（JR東日本）東北本線と阿武隈急行線の分岐・合流地点に設けられた鉄道施設です。

運転上の位置付け

この場所は、駅のように旅客が乗り降りする機能は一切持っていませんが、列車の安全かつ効率的な運行を行う上で非常に重要な役割を担っています。鉄道の規則上は、正式な信号場として指定されているわけではありません。しかし、その機能の重要性から、列車の運転計画を示すダイヤグラム（列車運行図表）や、運転士が必要な運行情報を確認するために携帯する行路表には、通常の信号場と同様に記載されています。JR東日本の東北本線における扱いとしては、隣接する東福島駅の構内の一部とされています。

また、矢野目信号場は、東北本線と阿武隈急行線の線路が物理的に分かれる線路上の分界点でもあります。ただし、旅客運賃の計算など、営業上の境界となる駅は福島駅であり、この信号場とは場所が異なります。福島駅から矢野目信号場までの区間は、JR東日本と阿武隈急行の列車が同じ線路を使用して走行する重複区間となっています。この重複区間を走る阿武隈急行線の列車は、安全確保のため、JR東日本の仙台輸送指令の管理のもとで運行されています。

設置の背景と沿革

矢野目信号場は、1988年（昭和63年）7月1日に運用を開始しました。この設置は、同日に開業した阿武隈急行線が東北本線に乗り入れる、または東北本線から分岐するために不可欠な設備として行われたものです。阿武隈急行線が開業する以前は、この地点は東北本線の単なる本線が通過する場所でした。

構造の特徴と周辺環境の変化

この信号場は、福島駅から東福島駅方面におよそ4.6キロメートル進んだ地点に位置しています。線路の配置としては、まず東福島駅側から阿武隈急行線の単線が東北本線の下り線に沿って近づき、両線が合流します。そして、ここから東北本線の上下線と、福島駅方面へ向かう阿武隈急行線の単線がそれぞれ分岐していくという構造になっています。

特に注目すべき構造は、東北本線の上り線が高架となって、阿武隈急行線が下り線から分岐した直後の線路の上を立体的に交差している点です。この立体交差により、阿武隈急行線の列車が走行している場合でも、東北本線上り列車の運行に影響が出ないようになっています。ちなみに、東北本線の上り線が下り線と阿武隈急行線の線路から分離した後、再び東北本線の上り本線として合流する地点は、下り線が阿武隈急行線と分岐する地点よりも約300メートルほど福島駅寄りにあります。

また、矢野目信号場が設置されたことで、周辺の交通環境にも変化が生じました。信号場ができる以前、この場所には「農免道路」とも呼ばれていた福島市道19号鎌田笹谷線の踏切がありました。阿武隈急行線の開業と信号場の設置に伴い、列車運行の安全性を高めるとともに、道路交通の円滑化を図るため、この道路は線路の下をくぐる地下道に改められ、踏切は廃止されました。しかし、当時東北本線上り線を跨いでいた道路の構造物の名残りが、現在の高架橋の一部として今も確認できます。

周辺環境

信号場の周辺には、地域の物流拠点である福島市中央卸売市場があります。また、歴史に関わる場所としては、北矢野目城跡や水雲神社が近くに存在します。その他、レジャー施設として、ゴルフ練習場のフジゴルフガーデンも近くに位置しています。

隣接する駅など

東日本旅客鉄道（JR東日本）の東北本線において、矢野目信号場の隣接駅は福島駅と東福島駅です。一方、阿武隈急行線においては、福島駅と卸町駅の間にある施設となります。

まとめ

このように、矢野目信号場は駅としての機能はないものの、JR東北本線と阿武隈急行線の円滑な列車連絡を担う、鉄道ネットワーク上重要な結節点としての役割を果たしています。日本の数ある信号場の一つとして、この地域の鉄道運行を支えています。

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