知内川 (北海道)

知内川（しりうちがわ）

知内川は、北海道の南西部に位置する渡島総合振興局管内を流れる二級河川であり、その水系の本流にあたります。この川は、渡島総合振興局管内を流れる河川の中で最も長い流路を持ち、流域面積においても遊楽部川や折戸川に次いで三番目の規模を誇る、地域にとって重要な河川です。

地理

源流は、松前郡福島町にある大千軒岳の脇に位置する燈明岳の南東斜面から湧き出しています。源流部から東へと流れ出し、砂防ダムを過ぎると流れは穏やかになり、周囲が開けた地形へと変わります。流路には住川や綱はい川といった比較的大きな支流が合流し、市の渡橋付近からは国道228号線（通称：福山街道）が川の西側を並行して走るようになります。このあたりから川は蛇行を繰り返しながら北へと向きを変えます。

上磯郡知内町へ入ると、川は湯の川市街地の外側を囲むように流れ、再び東へと曲がって進みます。この区間では、幅の広い自然の土手が形成されており、非常に激しい蛇行が見られます。尾出橋を越えると、周囲は水田地帯となり、いくつかの二級河川が合流してきます。かつて、知内川は湯の里地区の東端から現在の流路の北側を流れていましたが、その当時の流路は現在「旧知内川」として残されています。知内市街地に入ると、旧知内川や頃内川といった河川を合わせ、やがて津軽海峡へと注ぎ込みます。

総流路延長は34.7キロメートルですが、このうち綱はい川よりも一つ上流側の支流との合流地点から下流の21.4キロメートルが二級河川として指定されています。

歴史と文化

知内川流域は、北海道において最も古く砂金が採取された地域として知られており、知内町と福島町は古くから砂金の産地として名高い場所でした。記録によれば、1191年（建久2年）には甲斐国（現在の山梨県）のイハラ郡領主であった荒木大学がこの流域で砂金掘りを行ったとされています。さらに、1247年（宝治元年）には、知内川の支流である湯の川で砂金採掘をしていた人々が温泉を発見しました。この温泉は「大野土佐日記」にも記されており、多くの採掘者によって利用されていたといいます。これが現在、道内最古の温泉として知られる知内温泉の始まりです。1617年（元和3年）には、松前藩が川の上流部に直営の金山を開設しました。当時、奥羽地方では飢饉が発生しており、これを逃れた多くの採掘者がこの地域に押し寄せたといわれています。水源地や上流部に見られる「千軒」という地名は、「砂金採掘者の家が千軒も集まっていた」ことに由来すると伝えられています。現在でも、知内川の上流部や支流の河原では砂金を採取することが可能だそうです。

また、知内川は道南地方において、天の川と並んでサケの遡上が盛んなことでも知られています。この川には、干ばつの際に雨乞いをすると必ず大雨が降り、それによって多くのサケが遡上するという「雨石（あまいし）」の伝説が語り継がれています。地域では、サケの資源を維持・増やすために人工孵化事業も行われています。

名称の由来

知内川の名称は、アイヌ語の「チリ・オチ」（鳥が・いる所）に由来するという説が、明治時代の探検家・永田方正の地名解によって自然な解釈として挙げられています。知内川の周辺は、古くから鷹が多く生息する場所であり、江戸時代には松前藩が徳川家に献上した鷹のうち、半数以上が知内産の鷹であったという記録も残っています。この鷹との関連性が、川の名前の由来と結びついていると考えられています。

治水・利水

知内川水系における唯一の利水施設として、知内ダムが存在します。このダムは、1993年（平成5年）に国営灌漑排水事業の一環として、支流であるミナゴヤ川に建設されました。

知内川には、下流からしおざい橋、知内橋（国道228号）、新知内橋、向上雷橋、尾出橋、JR海峡線橋梁、萩茶里橋（国道228号）、七峰橋、千軒大橋、市の渡橋（国道228号）、大千軒橋といった多くの橋が架けられています。主な支流としては、下重内川、頃内川、旧知内川、ミナゴヤ川、湯の川などがあります（二級河川指定の支流を含む）。

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