知内温泉

知内温泉（しりうちおんせん）は、北海道上磯郡知内町字湯ノ里に湧き出る温泉地です。北海道内に現存する温泉地の中では最も古いとされる長い歴史を持ち、古くから湯治場として多くの人々に親しまれてきました。自然豊かな環境の中に佇むこの温泉は、その歴史的背景と湯の効能から、現代においても多くの温泉愛好家や湯治客が訪れる場所となっています。

歴史

知内温泉の開湯は、遠く鎌倉時代の1247年に遡ると伝えられています。この地で金山探索を行っていた、源頼家の家臣である荒木大学という人物が温泉を発見したという伝説が残されています。しかし、それ以前からアイヌの人々や地元住民がこの湯を利用していた可能性も指摘されており、より古くからの利用があったかもしれません。
江戸時代に入ると、1624年には松前藩によって湯治場としての本格的な整備が進められました。以降、歴代の松前藩主もこの温泉を気に入り、湯治のために訪れた記録が残されています。このように、知内温泉は単なる温泉地としてだけでなく、地域の歴史や文化と深く結びついた場所として発展してきました。藩政時代から続く湯治文化が、現代にも色濃く受け継がれています。

泉質と効能

知内温泉は、多様な泉質を持つことが大きな特徴です。湧出する温泉は、主に以下の四つのタイプに分類されます。

• - 鉄鉱泉
• - 炭酸塩類泉
• - 重炭酸土類食塩泉
• - 明礬泉

源泉の温度は62.5℃から70℃と比較的高温であり、それぞれの泉質が持つ成分により、多様な効能が期待されます。古くから伝わる効能としては、特に火傷や胃腸の疾患に対する効果が知られています。また、温泉地では湯を飲む「飲泉」が推奨されており、一部では特定の癌（口頭癌や胃腸癌）に対する効能をうたう表現も見られます。
ただし、温泉の効能は全ての人に等しく現れるものではなく、特に疾患に対する効果については、医学的に明確に証明されたものではありません。温泉は療養やリラックスを目的とするものですが、その効果には個人差があることを理解しておく必要があります。

温泉地・施設

知内温泉の中心となっているのは、日本秘湯を守る会にも加盟している一軒宿「知内温泉旅館・ユートピア和楽園」です。この宿は、歴史ある湯治場の伝統を守りつつ、現代のニーズに合わせて日帰りでの入浴も受け入れています。
館内には、趣の異なる二つの内湯があり、それぞれ「上の湯」と「下の湯」と呼ばれています。これらは男女別に分かれており、ゆっくりと湯浴みを楽しむことができます。また、自然に囲まれた場所に、素朴な造りの混浴露天風呂も備えられており、四季折々の景色を眺めながら開放的な入浴体験ができます。
知内温泉は、その効能、特に火傷や胃腸病への期待から、古くから多くの湯治客で賑わってきました。現代においても、その伝統は引き継がれており、長期滞在して心身を癒す湯治客が多く訪れる、生きた湯治場としての機能が健在です。
さらに、宿の周辺には、より自然に近い、野湯のような雰囲気を持つ露天風呂も存在します。「展望台の湯」や「営林署の湯」といった通称で知られており、秘湯感を求める温泉愛好家に利用されています。これらの施設は、歴史ある湯治文化と、手つかずの自然が融合した知内温泉ならではの魅力と言えるでしょう。

アクセス

知内温泉へのアクセスは、公共交通機関または自家用車を利用できます。

• - 鉄道・バス利用: 北海道新幹線または道南いさりび鉄道の木古内駅が最寄り駅です。木古内駅からは、函館バスに乗車し、約45分。「湯の里温泉入口」バス停で下車後、徒歩約20分で温泉地に到着します。
• - 自動車利用: 函館茂辺地道路の北斗茂辺地インターチェンジが便利です。インターチェンジからは、国道228号線を経由し、北海道道812号館町福島線を進みます。約30キロメートルで知内温泉にたどり着きます。道中の景観を楽しみながらのドライブもおすすめです。

まとめ

北海道最古という長い歴史を持ち、複数の泉質と古くから伝わる効能、そして今なお息づく湯治文化。知内温泉は、これらが融合した魅力的な温泉地です。一軒宿の佇まいや、自然の中の野湯など、秘湯の雰囲気を色濃く残しており、日々の喧騒から離れて心身のリフレッシュを求める人々にとって、静かで落ち着いた時間を提供する場所となるでしょう。日本の温泉地の長い歴史を感じられる貴重なスポットです。

もう一度検索