短三和音

短三和音（マイナーコード）とは

短三和音（たんさんわおん）は、西洋音楽において非常に重要な役割を果たす和音の一つです。英語では「minor triad」、ドイツ語では「Moll-Akkord」と呼ばれます。この和音は、根音（基準となる音）、根音から短三度（3半音）上の音、そして根音から完全五度（7半音）上の音という3つの音で構成されています。一般的に「マイナーコード」という名称でも広く知られています。

短三和音の構成

短三和音の基本的な構造は以下の通りです。

根音 (X): 和音の基礎となる音。
第3音 (Y): 根音から短三度（3半音）上の音。
第5音 (Z): 根音から完全五度（7半音）上の音。

例えば、C（ハ）を根音とする短三和音（Cm）は、C、E♭（ミ♭）、G（ソ）の音で構成されます。

短三和音の周波数比

短三和音の各音の周波数比は、厳密には純正律と平均律で異なりますが、近似的な比率としては以下のようになります。

根音: 1
第3音: 6/5 (約1.200)
第5音: 3/2 (1.5)

短三和音の主な用法

短三和音は、西洋音楽において長三和音と並んで非常に重要な和音です。以下に具体的な用法をいくつか紹介します。

長調:
II (例: ハ長調のDm)
III (例: ハ長調のEm)
VI (例: ハ長調のAm)
短調:
I (例: イ短調のAm)
II (例: イ短調のBdim)
IV (例: イ短調のDm)
V (例: イ短調のEm)

短三和音の転回形

短三和音には、基本形に加えて、第1転回形と第2転回形という2つの転回形が存在します。

基本形

基本形は、根音が低音（ベース）にある形です。ポピュラー音楽では特にこの形が多用されます。安定感のある響きが特徴です。

第1転回形

第1転回形は、第3音が低音にある形です。基本形とは異なる浮遊感のある響きを持ち、クラシック音楽でよく用いられます。バス以外の声部に第3音を含むと響きが重くなるため、注意が必要です。ただし、ポピュラー音楽ではベースが第3音であることにあまり神経質になる必要はありません。

第2転回形

第2転回形は、第5音が低音にある形です。響きが不安定であり、基本形や第1転回形のように単独で用いられることは少なく、偶成和音的な用法や不安定さを意図した用法に用いられることが多いです。倚和音としての用法（例: Cm/G - G7 - Cm）や、経過和音としての用法（例: C - Em/B - Am7）がよく見られます。

短三和音への付加音とテンション

ポピュラー音楽では、短三和音に第6音や第7音を付加して、より豊かな響きを得ることがあります。例えば、Xm6、Xm7、XmM7といった形です。

第6音: 短六度または長六度のいずれかが選択されます。
第7音: 短七度または長七度が選択されます。

また、短三和音には9th、11th、13thといったテンションが付加されることもあります。さらに、第3音を第4音に置き換えたsus4もよく使用されます。

付加音やテンションは、通常ダイアトニックスケール上の音から選ばれ、和声の機能を損なわないように注意が必要です。

短調においては、I度の和音に長6度、短7度、長7度のいずれも付加することが可能です。例えば、イ短調では以下のようになります。

Am6：Im6。旋律的短音階上のダイアトニックコード
Am7：Im7。自然短音階上のダイアトニックコード
AmM7：ImM7。和声的短音階および旋律的短音階上のダイアトニックコード

これら3つの和音は、まとめてトニックマイナーコードと呼ばれます。

短三和音の正当性

短三和音は、長三和音のような自然倍音列に基づいた音響的な根拠を持ちません。しかし、フーゴー・リーマンは、下方倍音という概念を用いて、長三和音と同様の方法で短三和音を正当化しようとしました（リーマン理論）。

まとめ

短三和音は、そのシンプルな構成にもかかわらず、音楽表現において非常に重要な役割を果たします。基本的な用法から転回形、付加音、テンションまで、短三和音の多様な側面を理解することで、音楽の表現力をより豊かにすることができるでしょう。

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