石井藤吉郎

石井藤吉郎の生涯

石井藤吉郎（いしい とうきちろう、1924年3月16日 - 1999年6月30日）は、東京六大学野球および社会人野球界で多大な影響を与えた野球選手兼監督である。彼は茨城県大洗で生まれ、母の影響を受けて5歳で野球を始めた。旧制水戸商業に進学し、1942年の「幻の甲子園大会」では左腕投手として頭角を現し、準々決勝まで進んだ。

早稲田大学法学部に入学後、1943年には早慶戦にベンチ入りを果たすが、戦争のために応召される。終戦時には満州にいて捕虜となり、1947年までシベリアに抑留された。帰国後、体調の回復を待ちつつも、早大のキャンプに参加し、再び豪打を見せた。その結果、チームの四番打者に定着し、4度のリーグ優勝を収めるなど、早稲田を復活させた。

卒業後は静岡の大昭和製紙に入社し、1953年の都市対抗では中堅手・四番打者として日本一に貢献した。その後は同社の監督を務め、育てた選手たちをプロに送り出す成果を上げた。1964年には早稲田大学野球部の監督に就任し、11年間の指導期間中にリーグ優勝を6回、大学日本一を達成した。

また、日米大学野球の総監督を務め、選手たちの力量を引き出す指導力が評価された。特に、彼が育てた選手の中にはプロ野球選手として成功した者が多数おり、石井の影響力は広範囲にわたった。選手契約交渉には干渉せず、高潔な姿勢を貫き、裏金疑惑などの不正からは無縁であった。1995年には野球殿堂の競技者表彰を受け、アマチュア選手としての功績が評価された。

そのユーモア溢れる人柄や温かみのある指導方針は、選手たちからの信頼を得る要因となり、多くの後輩たちから慕われた。特に、水戸商業の後輩である豊田泰光は父親のように彼に懐いていた。その一方で、酒豪としても知られた石井は、抑留生活中に覚えたウォッカがきっかけで酒を嗜むようになった。

1999年に逝去した石井は、母校の水戸商業を甲子園出場に導いた後、久しぶりの早稲田大学の優勝を見届けたかのようにその生涯を閉じた。彼の指導のもとで大成した選手たちが、今もなお日本の野球界で活躍していることは、石井の遺したものの大きさを示している。

主要な業績と表彰

• - 野球殿堂競技者表彰（1995年）
• - 早稲田大学野球部の監督時代に6回のリーグ優勝
• - 第1回日米大学野球の総監督として優勝

参考文献

• - 『私が育てた最高の3番打者・谷沢健一』（1984年、恒文社）
• - 『関白さんのホームラン』（2003年、富永俊治著、樂書館）

もう一度検索