石原忠男

石原忠男（いしはら ただお）は、日本の経済学者です。

生涯と学歴

石原忠男氏は、大正6年（1917年）3月4日に東京で誕生しました。昭和15年（1940年）に中央大学経済学部を卒業し、経済学の基礎を修めました。大学卒業後は、実業界である東京芝浦電機（現在の東芝）の調査課に勤務しました。しかし、学問への探求心から、昭和17年（1942年）からは中央大学大学院に在籍し（昭和19年まで）、さらに専門的な学びを深めました。

大学でのキャリア

大学院での学びを終えた後、昭和23年（1948年）に母校である中央大学経済学部の講師として迎えられ、大学での教育・研究活動を開始しました。その後、順調に昇任し、昭和25年（1950年）には助教授、昭和30年（1955年）には教授となりました。経済学部に加えて商学部の教授も務め、長年にわたり中央大学の教壇に立ち、多くの学生や後進の研究者を育成しました。昭和62年（1987年）に中央大学を定年退職し、その功績が称えられ、同大学の名誉教授となりました。

学術・社会活動

石原氏は、学術研究や教育活動と並行して、日本の学術コミュニティや社会運動にも積極的に関わりました。特に、科学者の立場から社会の諸問題に関与することを目指した日本科学者会議の創立に参画し、全国幹事、後に参与として会の運営と活動を支えました。また、経済理論学会においては、昭和50年（1975年）から昭和54年（1979年）までの4年間、代表幹事を務めました。この期間、同学会の運営の中心を担い、研究発表の機会の提供や会員間の交流促進に尽力するなど、日本の経済学、特に理論経済学の研究活動の発展に大きく貢献しました。

主な研究業績

石原忠男氏の研究は、一貫してカール・マルクスの経済学理論を基盤としていました。彼はマルクスの主著である『資本論』の体系を深く分析し、その理論的意義や現代資本主義への適用可能性を探求しました。特に、資本主義経済に内在する矛盾や周期的な経済恐慌の発生メカニズムに関する理論的考察は、彼の研究の中心の一つでした。その研究成果は、数多くの著作として結実しています。主な著作としては、以下のものが挙げられます。

『経済学の基礎理論』（三和書房、1952年）
『経済学 その生成と発展』（三和書房、1954年）
『恐慌の経済理論』（未来社、1960年）
『経済学原論』（学芸書房、1963年）
『マルクス主義経済学の基礎』（日本評論社、1964年）
『経済原論 『資本論』の体系』（青木書店、1975年）
『『資本論』の心』（中央大学出版部、1985年）

また、越村信三郎氏や古沢友吉氏といった同時代の研究者との共同研究も積極的に行い、共編著として以下の著作を刊行しています。これらの共同研究は、現代資本主義の複雑な構造を分析しようとする試みであり、当時の日本の経済学界における議論の一端を示しています。

『資本論の展開 批判・反批判の系譜』（越村信三郎、古沢友吉と共編著、同文館出版、1967年）
『独占資本論への道 現代資本主義への理論的接近』（越村信三郎、古沢友吉と共編著、同文館出版、1969年）
『現代資本主義の構造分析』（越村信三郎、古沢友吉と共編著、同文館出版、1972年）

これらの著作を通じて、石原氏はマルクス経済学の理論体系を日本に広め、その研究水準の向上に貢献しました。

栄誉

長年にわたる学術研究、教育、そして学界への貢献が認められ、平成2年（1990年）には勲三等旭日中綬章を受章しました。

まとめ

石原忠男氏は、経済学、特にマルクス経済学の分野において、教育者および研究者として日本の学界に多大な貢献をした人物です。中央大学での長期にわたる教育活動、経済理論学会代表幹事としてのリーダーシップ、そして一連の著作は、日本の経済学史において重要な位置を占めています。その深い学識と功績は、今日においても多くの研究者や学生に影響を与え続けています。

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