石坂わたる

石坂 わたる

石坂 わたる（いしざか わたる）は、1976年9月11日生まれの日本の政治家、ソーシャルワーカー、教諭です。特に発達障害児の教育と心理分野を専門としており、現在は東京都中野区議会議員を4期務めています。

生い立ちと学び

東京都大田区に生まれ、その後稲城市で育ちました。成蹊大学経済学部経済学科国際社会コースを2000年3月に卒業した後、専門分野を深めるため、2001年には千葉大学特殊教育特別専攻科発達障害教育専攻を修了しました。この学びを活かし、2002年には旭出養護学校（現在の旭出学園）で教諭としてキャリアをスタートさせました。教育現場での経験は、後に彼の政治活動の基盤の一つとなります。さらに学びを続け、2010年には立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科の博士前期課程を修了しています。

政治家としての歩み

教諭としての経験や、セクシュアルマイノリティに関するボランティア・活動を通じて、社会における様々な課題を目の当たりにした石坂氏は、地方政治の場で変革を起こすことを決意します。2007年4月に行われた中野区議会議員選挙に、無所属候補として初めて挑戦しました。この時、彼はオープンリー・ゲイであることを表明して立候補しましたが、惜しくも当選には届きませんでした（56名中51位、1091票獲得）。これは、日本において性的指向を公表した初の公職者誕生には至らなかった事例として記録されています。

しかし、政治への情熱を失わず、2011年4月の区議会議員選挙で再び挑戦します。この選挙では、「性的マイノリティのために働く当事者」というイメージを超え、「すべての社会的マイノリティの多様性の尊重」、「全て区民の『不安と孤立を見捨てない』」、「マイノリティとマジョリティの協働」といった、より幅広い層に向けた公約を掲げました。この訴えが多くの共感を得て、1620票を獲得し、定員42名中39位で初当選を果たしました。

この当選は歴史的な意義を持つものでした。同日に豊島区議会で当選した石川大我氏と共に、石坂氏は日本で初めてオープンリー・ゲイであることを公表して当選した公職者の一人となりました（なお、トランスジェンダーであることを公表した公職者としては、2003年より世田谷区議を務める上川あや氏が先行しています）。また、彼は中野区議会議員として初めて精神保健福祉士の資格を持つ議員でもあります。

その後も中野区政において活躍を続け、2015年の区議会議員選挙で1,783票を得て再選（32位）、2019年の選挙で1,771票を得て3選（35位）、そして2023年の選挙で1,800票を得て4選（33位）を果たし、現在に至ります。

主な取り組みと実績

区議会議員として、石坂氏は自身の専門性と経験を活かし、多様な人々の権利保障と社会的包容性の向上に尽力しています。特に、性的少数者の権利に関する取り組みでは、渋谷区が同性パートナーシップ制度を条例化する以前から、先進的な施策実現に貢献しました。

具体的には、

同性カップルの同居を含む住み替え支援事業の推進
中野区の「防災緊急連絡カード」の連絡先に対象として同性パートナーを含めること（これにより、災害時に区へ安否確認を照会する際、同性カップルでも異性間の事実婚における「同居の親族」と同等な情報が得られるようになりました）
同性間のDVに対しても、異性間の事実婚におけるDVと同様の相談対応を行う体制の整備

などを実現させてきました。

また、地方議会におけるLGBT関連施策の推進を目指し、2017年7月には、石川大我豊島区議や上川あや世田谷区議らとともに「LGBT自治体議員連盟」の設立に携わりました。この連盟には、趣旨に賛同する全国の自治体議員が多数参加しており、地方から性的少数者の人権を守る条例や施策を全国に広げることを目指しています。

その他の活動

石坂氏は区議会議員としての活動の傍ら、多岐にわたる社会活動にも参加しています。

コープとうきょう（生活協同組合）の組合員総代（中野区選出）を務める。
中野ボランティアセンターに登録し、被災地支援や福祉まつり実行委員、セクシュアルマイノリティに関する福祉カレッジ講師などを担当。
日本家政学会の会員として、保育・発達・子ども家庭福祉分野に関わる。
静岡県男女共同参画センターや名古屋高校生サマーセミナー、家族研究・家族療法学会などで講演活動を行う。
同性愛者向けSNS「ゲイコム」でニュース記事を執筆。
コミュニティセンター aktaにおいて、HIV予防啓発活動に携わる。
立花隆ゼミのゼミ長を務めた経験がある。
* 同性愛者の当事者として、セクシュアルマイノリティの福祉や顕在化に関する当事者団体に参加。

著作活動

共著として、『精神保健福祉援助演習（専門）』（弘文堂、2012年）、『ドキュメント地方政治II　議会はあなたを待っている市川房枝政治参画フォーラムでの学びと実践から』（女性と政治センター、2014年）があります。また、日経グローカル（250号、2014年8月18日号）に「少数者の視点を政策に反映　障害児・者の環境改善に尽力」と題する記事を執筆するなど、言論活動も行っています。

石坂氏の活動は、専門分野である発達障害児支援の知見と、自身の性的少数者としての経験、そしてソーシャルワーカーとしての視点を融合させ、地方自治の現場からすべての人の多様性が尊重される社会の実現を目指すものです。

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