石垣りん

石垣りんは、大正9年（1920年）に東京で生まれました。幼少期に関東大震災や家族との死別・離別を経験するなど、波瀾万丈な人生を送ります。高等小学校卒業後、日本興業銀行に就職し、定年まで銀行員として働きながら詩作を続けました。

彼女の詩は、日々の生活に根ざしたものが多く、台所用品や家族、社会への眼差しが、飾らない言葉で綴られています。代表作の一つである「表札」は、個人の存在と社会との関係を問いかける作品として、広く知られています。

石垣りんの詩は、その平易な言葉の奥に、深い人間洞察と社会への批判精神が込められているのが特徴です。働く女性としての視点や、戦争、貧困といった社会問題に対する意識も強く、彼女の作品は、時代を超えて読み継がれています。

主な詩集に『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』(1959年)、『表札など』(1968年)、『略歴』(1979年)、『やさしい言葉』(1984年)などがあります。これらの詩集は、現代詩の世界に大きな影響を与え、数々の賞を受賞しました。

彼女は詩作活動の傍ら、エッセイも執筆し、ユーモアに富んだ文章で日常の出来事や社会への思いを綴りました。また、合唱曲の作詞も手がけ、その作品は多くの人々に歌われています。

石垣りんは、平成16年（2004年）に心不全のため亡くなりましたが、彼女の作品は今もなお多くの人々に愛され、読み続けられています。彼女の詩は、私たちの日常に潜む美しさや、社会に対する問題意識を呼び覚ます力を持っていると言えるでしょう。

年譜
1920年：東京府東京市赤坂区に生まれる
1934年：日本興業銀行に就職
1959年：第一詩集『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』を刊行
1968年：第二詩集『表札など』を刊行
1969年：H氏賞を受賞
1971年：田村俊子賞を受賞
1975年：日本興業銀行を定年退職
1979年：地球賞を受賞
2004年：心不全のため死去

著作
詩集
『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』
『表札など』
『略歴』
『やさしい言葉』
散文集
『ユーモアの鎖国』
『焔に手をかざして』
『夜の太鼓』

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