石川哮

石川哮（いしかわ たける、1932年5月16日 - 2008年8月19日）は、日本の医学界において、特にアレルギー学および免疫学の分野で顕著な功績を残した研究者、教育者である。熊本大学名誉教授であり、日本アレルギー学会の理事長を務めるなど、そのリーダーシップは学会内外で高く評価された。

東京府に生まれた石川氏は、千葉大学医学部にて医学を修め、同大学院医学研究科博士課程を修了した。1965年には「Wegener氏肉芽腫症及びその類似疾患の血清学的研究」と題する論文で千葉大学より医学博士号を取得。さらに、研究者としての視野を広げるため、渡米してニューヨーク州立大学バッファロー校でも医学博士号を取得するなど、国内外で研鑽を積んだ。

帰国後、石川氏は熊本大学に着任。耳鼻咽喉科学講座の教授として、長年にわたり臨床、研究、教育の最前線に立った。特に、アレルギー性鼻炎やその他の耳鼻咽喉科領域におけるアレルギー・免疫疾患の研究に深く取り組み、多くの業績を挙げた。教育者としても、多くの後進の育成に力を注いだ。

1998年に熊本大学を定年退職した後は、同大学の名誉教授となった。その後も医学界への貢献は続き、医療法人聖十字会九州アレルギー・免疫センター副センター長、日本アレルギー協会九州支部長など、地域医療や啓発活動に尽力した。また、日本アレルギー学会理事長として、国内のアレルギー学の発展と普及に重要な役割を果たした。

石川氏は、個性豊かな家族関係でも知られる。実弟は、日本を代表するジャズ・ドラマーである石川晶氏であり、彼との兄弟関係は多くの人に知られていた。娘の上仲小玲氏は薬剤師として、父と同じ医療分野で活躍。さらに、甥である石川和博氏は、ケニアを拠点に報道取材のコーディネーターを務め、フューチャーキッズ・プロジェクトの代表として活動している。

石川晶氏が設立した国際協力団体「フューチャーキッズ・プロジェクト」では、石川哮氏が日本事務局長を務め、国内での募金活動や広報活動に晩年まで積極的に関わった。この活動を通じて、アフリカの子どもたちへの教育支援など、社会貢献にも力を注いだ。

石川氏は、千葉大学時代からの友人である免疫学者の多田富雄氏と生涯にわたる親交を結ぶなど、幅広い人脈を持っていた。また、専門分野に関する著作も多く上梓しており、『免疫・アレルギー学からみる耳鼻咽喉疾患』、『ネブライザー療法』といった専門書の他、自身の人生観や医療観に触れた『ポレポレ(Pole Pole)―生のリズムと医のリズム』など、多岐にわたる著作がある。これらの著作は、後進の研究者や医療従事者にとって貴重な情報源となっている。

石川哮氏は、2008年8月19日、胃がんのため熊本市内の病院で死去した。享年76歳。生涯を通じて、医学者として、教育者として、そして社会貢献活動家として、多方面で活躍し、多くの人々に影響を与えた。彼の研究成果や教育者としての情熱は、今なお日本の医学界に息づいている。

主な著作

『免疫・アレルギー学からみる耳鼻咽喉疾患』（南江堂、1988年）
『ネブライザー療法―上気道領域における臨床諸問題』（文光堂、1991年）
『ポレポレ(Pole Pole)―生のリズムと医のリズム』（医薬ジャーナル社、1998年）
『アレルギー医学―その反応カスケードの解明と免疫療法』（医薬ジャーナル社、1998年）
* 『癌免疫医学―人癌免疫治療を目指して』（医薬ジャーナル社、1998年）

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