石川潤 (美術家)

石川潤（いしかわ じゅん）

1982年、北海道七飯町に生まれた日本の美術家です。彼の作品は、肉眼では捉えられない微細なミクロの世界から、無限に広がる宇宙に至る壮大なスケールを結びつけ、観る者を惹きつける独特の世界観を展開しています。

作風

石川潤の芸術は、目に見えない世界と無限の宇宙という二つの極を結ぶ接点を探求することにあります。彼は、自己の内面の奥深さと呼応するように、植物の表皮や組織を思わせるような繊細な「ひだ」のモチーフを一貫して描き続けています。この「ひだ」の表現を通じて、吸い込まれるような宇宙的な極大と極小の世界観を表現しています。石川自身は、自身の作品における「ひだ」について、「それは命と時間の象徴である」と語っています。キャンバス上に心の襞（ひだ）を描き出す行為は、彼にとって「命とは何か、自分が生きる理由とは何か」を探求する営みであり、現代社会における自己の存在を問いかける試みであるとしています。

略歴と主な活動

石川潤は、1982年に北海道七飯町で生を受けました。2008年には生涯学習学修士を取得しています。美術活動においては、北海道を拠点に精力的に活動を開始し、2007年には第82回道展で佳作賞を受賞しました。その後も、2009年と2010年の第84回、第85回道展でも佳作賞を受賞するなど、道内の主要な公募展で評価を得ています。また、2008年には北海道抽象派作家協会の同人となりますが、後に退会しています。

彼の活動は道内に留まらず、広く展開しています。初期の活動としては、2003年の北方圏学生美術合同展への参加や、2005年の「Art group chicken展」、「どこでもアート展」などがあります。2006年には、全道展、新道展、道展といった道内の主要な展覧会に多数出品しました。2007年には国立新美術館で開催された第62回行動展にも出品しています。2009年には、トーキョーワンダーサイト渋谷での「トーキョーワンダーシード2009」に出品し、東京での活動も開始しました。同年には、札幌のギャラリーたぴおで開催された「All Japan Under 40 Collections in Sapporo」にも参加しています。

2010年には、青森県立美術館での青函美術交流展「アオダテハコ森2010」や、損保ジャパン東郷青児美術館での「損保ジャパン美術財団選抜奨励展」に出品するなど、活動の場を広げました。函館でも精力的に作品を発表しており、2011年にはギャラリー三日月で「深深」展を開催しました。2012年には「函館トリエンナーレ」や札幌大通り地下ギャラリー500m美術館での企画展「Excessive!過剰化する表現」、北海道立函館美術館での「道南美術の２１世紀展」に参加しています。その後も函館での活動は続き、2014年にはギャラリー三日月で「ねこのあしあと展」、「新深深」展を開催し、札幌でも「真深深」展を行いました。

2015年には小樽の「ハルカヤマ藝術要塞2015」に参加。2016年には、上野の森美術館で開催された注目の現代美術展「VOCA2016」に作品「波紋」を出品し、全国的な知名度を高めました。同年には函館での「函館十人十色トレインナーレ」、ギャラリー三日月での個展「波紋」も開催しています。

国際的な活動としては、2017年にフィンランドのギャラリーNapaで開かれた「Fairly North 2017」に出品しています。2019年には、横浜のBankART AIR 2019に大道芸人・写真家である紀あさと「旅する芸術祭」名義で参加し、傘へのペイント作品などを発表しました。また、この年の「はこだてトリエンナーレ2019」では、実行委員の共同代表として中心的に活動しました。木古内町役場町長室や、道南いさりび鉄道の車両内装に作品を展示するなど、地域に根差した活動も行い、実行委員会として国土交通省より日本鉄道賞特別賞を受賞しています。

近年も活動は活発で、2021年には大丸札幌店美術画廊で個展「傍らの境界」を開催。2022年には三岸好太郎美術館での「みまのめ展」に参加しました。そして2023年の「ハコトリ2023」では、函館美術館を会場にメインキュレーターとして展覧会の企画運営を手がける傍ら、作家としても自身の作品を出品するなど、多様な形で美術界に貢献しています。

石川潤は、繊細かつ力強い「ひだ」の表現を通して、生命、時間、宇宙、そして自己の存在という深遠なテーマを探求し続ける日本の現代美術家です。キュレーターとしての活動も行うなど、その活躍の幅は広がりを見せています。

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