石川透

石川透は、1959年6月生まれの日本の国文学者です。中世から近世にかけての文学、特に室町物語や御伽草子、奈良絵本といった分野の研究で知られています。これらの作品群は、当時の社会や文化を映し出す鏡であり、石川氏はその深い洞察力と豊富な知識によって、これらの古典文学の魅力を現代に伝えています。

1983年に慶應義塾大学文学部国文学科を卒業後、1988年には同大学院博士課程を単位取得退学しました。その後、1993年には日本古典文学会賞を受賞し、その研究成果が高く評価されました。1994年に慶應義塾大学文学部の助手として着任し、1996年には助教授に昇任、2006年には教授に就任しました。2003年には、長年の研究テーマであった「室町物語・古注釈・奈良絵本の研究」によって、慶應義塾大学から文学博士の学位を授与されました。

石川氏の研究は、単に文献を読み解くだけでなく、当時の絵画資料や社会背景も考慮に入れ、多角的な視点から古典文学を捉えるところに特徴があります。その研究成果は、数多くの著作にまとめられており、古典文学研究における重要な文献となっています。

主な著書としては、『落窪物語の変容』(2001年)、『室町物語と古注釈』(2002年)、『図解・御伽草子』(2003年)、『奈良絵本・絵巻の生成』(2003年)、『御伽草子その世界』(2004年)、『奈良絵本・絵巻の展開』(2009年)、『入門 奈良絵本・絵巻』(2010年)、『奈良絵本・絵巻　中世末から近世前期の文華』(2022年)などがあります。これらの著作は、御伽草子や奈良絵本といった、これまで専門的な研究が少なかった分野に光を当て、その歴史的・文学的意義を明らかにしました。また、編著として、『魅力の御伽草子』(2000年)、『伊勢物語古註』(2004年)、『魅力の奈良絵本・絵巻』(2006年)、『広がる奈良絵本・絵巻』(2008年)などがあり、古典文学の普及にも貢献しています。さらに、『保元・平治物語絵巻をよむ 清盛栄華の物語』(2012年)や『源平盛衰記絵本をよむ 源氏と平家合戦の物語』(2013年)など、絵巻を素材とした研究も展開しており、古典文学の新たな魅力を掘り起こしています。

石川透の研究は、古典文学の奥深さを伝えるだけでなく、その研究手法においても、後進の研究者たちに大きな影響を与えています。慶應義塾大学文学部での教育活動を通して、多くの学生を育成し、日本の古典文学研究の発展に大きく貢献しています。


慶應義塾大学文学部

慶應義塾大学 文学部   人文社会学科　文学系

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