石巻ハリストス正教会

石巻ハリストス正教会・聖使徒イオアン聖堂

石巻ハリストス正教会は、宮城県石巻市に位置する日本ハリストス正教会の教会です。この教会は、歴史的な初代聖堂と、現在使用されている二代目聖堂の二つの聖堂を所有しています。

教会の歴史

1872年、亜使徒聖ニコライが東京を拠点に全国での宣教活動を開始しました。同年12月には、石巻出身のセルギイ勝又昱が洗礼を受け、これを機に石巻周辺地域への正教会の伝道が始まりました。

1877年1月、湊村では伝道者ボリス山村の尽力により、モイセイ平塚恒次郎ら29名が洗礼を受け、湊聖枝教会が設立されました。同年12月には、石巻においてペトル朽木伝道者の働きにより、イオアン伊藤忠右衛門ら23名が洗礼を受け、「石巻光明会」が設立されました。

1879年11月、現在の石巻市千石町に本格的な木造二階建ての会堂が竣工し、教会名も「石巻聖使徒イオアン教会」と改称されました。この会堂は、瓦葺きで十字架型の平面を持つ特徴的な建築で、教役者住宅も併設されていました。その後、教会は急速に発展し、周辺地域に10以上の教会が設立されることとなりました。

1881年には、亜使徒聖ニコライが石巻ハリストス正教会を訪問し、当時、名簿上116名、実勢で82名の信徒がいたと記録されています。しかし、日露戦争やロシア革命の影響で、日本正教会全体の教勢が低迷し、石巻の教会もその影響を受けることとなりました。特に、ロシア革命後の資金援助の途絶や、正教会に対する偏見が教勢停滞の大きな要因となりました。その後、石巻周辺の教会は石巻聖使徒イオアン教会に統合され、現在に至っています。

聖使徒イオアン聖堂

石巻ハリストス正教会の会堂は、「聖使徒イオアン聖堂」という名称で知られています。イオアンとは、ヨハネのギリシャ語表記「Ιωάννης」の教会スラヴ語での転写「Иоан」に由来します。

初代聖堂

初代聖堂は、1879年11月に石巻市千石町に建てられました。しかし、1978年の宮城県沖地震で被災し、石巻市によって中瀬公園内に移築・復元されることになりました。2011年の東日本大震災で津波による被害を受けましたが、倒壊を免れ、修復工事を経て2019年に再び一般公開されています。

二代目聖堂

二代目聖堂は、初代聖堂の跡地に新築され、旧会堂の名称を引き継ぎました。石巻ハリストス正教会は、この新しい会堂を拠点に活動しています。2011年の東日本大震災では、津波による浸水被害がありましたが、建物自体は無事でした。2021年11月現在、ルカ田畑隆平が管轄司祭を務めています。

旧石巻ハリストス正教会 教会堂

旧石巻ハリストス正教会教会堂は、現存する日本最古の木造教会建築です。現在は石巻市が所有し、宗教施設としては使用されていません。

概要

設計者は不明ですが、正教徒によって設計されたと考えられています。建物は十字型の平面を持ち、屋根は瓦葺きです。1階は畳敷きの集会室、2階は絨毯敷きの聖所・至聖所となっており、奉神礼が行われていました。1階と2階は急な階段で繋がっています。

歴史

1879年11月、「聖使徒イオアン聖堂」として竣工しました。建設費は999円でした。

1978年の宮城県沖地震で大きな被害を受け、教会としての役目を終えた後は、石巻市の文化財として中瀬公園に移築・復元されました。復元工事は、石巻建青会によって行われ、1980年に完了しました。移築・復元された旧会堂は石巻市に寄贈され、石巻市指定有形文化財に指定されました。

2011年の東日本大震災で再び津波の被害を受けましたが、解体と復元を経て、創建時の姿に戻されました。復元工事では、被災前の部材の3分の2が再利用され、外壁も漆喰塗りに戻されました。復元された聖堂は、2019年7月に記念式典が行われ、8月2日に一般公開が再開されました。

拝観情報

所在地: 宮城県石巻市中瀬3番18号
開館時間: 9時 - 12時、13時 - 17時 (11月 - 3月は16時閉館)
休館日: 毎週火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日 - 1月3日)
観覧料: 無料
アクセス:
JR石巻駅から徒歩15分
三陸沿岸道路石巻河南ICから車で約15分

脚注

注釈

出典

参考文献

八木谷涼子・編『別冊太陽　日本の教会をたずねて II』平凡社 ISBN 4582921272

石巻ハリストス正教会