石巻康保

石巻 康保

石巻 康保（いしまき やすもり）は、戦国時代末期から安土桃山時代初頭にかけて、関東に勢力を張った後北条氏の家臣として活躍した武将です。詳しい生年は伝わっていませんが、天正7年（1579年）頃に没したと考えられています。通称は勘解由左衛門尉、後に下野守と名乗りました。

石巻氏の家系

石巻氏は、後北条氏の初代である北条早雲がまだ伊勢新九郎を名乗っていた頃から後北条氏に仕えたという、数少ない最古参の家柄の一つです。康保は石巻家貞の子として生まれ、兄に康雄、弟に康敬、天用院がいました。兄の康雄は、後に後北条氏の外交において重要な役割を担った板部岡江雪斎の養父にあたる板部岡氏を相続することになりました。このため、石巻氏の家督は、永禄11年（1568年）に父家貞から康保へと譲られました。

評定衆としての活動

家督を継承した康保は、後北条氏の政務における中枢に加わりました。彼は小田原城で開催される重要な評定に参加するようになり、後北条氏の様々な政策決定に関与しました。評定衆は、当時の後北条氏における政治、軍事、外交など、幅広い分野の重要事項を議論・決定する機関であり、康保がこの一員であったことは、彼が後北条氏内部で高い地位と信頼を得ていたことを示しています。また、彼は主君である北条氏康から名前の一字「康」を賜っており、これは山角康定や垪和康忠といった他の有力家臣にも与えられたもので、氏康にとっての康保の重要性を示す証といえます。

野庭関城の城代

康保は、政務に携わる一方で、軍事的な要衝の支配も任されていました。彼は鎌倉郡野庭（現在の神奈川県横浜市港南区野庭）の領主であり、この地に築かれた野庭関城の城代を務めました。野庭関城は、後北条氏の相模における重要拠点の一つである玉縄城の支砦として機能し、鎌倉方面や武蔵方面からの潜在的な脅威に対する備えとしての役割を担っていました。城代として、康保はこの地域の統治と防衛の責任者であり、領内の安定維持に貢献しました。

小田原防衛戦での奮戦

後北条氏は、その勢力拡大の過程で、上杉氏や武田氏といった強敵としばしば対峙しました。特に本拠地である小田原城は、幾度となく大規模な攻撃を受けました。康保は、これらの防衛戦にも武将として参加しています。記録によると、彼は特に第2次および第3次の小田原防衛戦において、小田原城内の重要な防御地点である井細田口の守備を担当したとされています。井細田口は城の外郭に位置し、敵兵の侵入を阻止するための要所であり、ここを守ることは城全体の防御において極めて重要でした。

最期と後継

石巻康保は、天正7年（1579年）頃にその生涯を閉じました。彼の死後、石巻氏の家督は弟の康敬が継承し、引き続き後北条氏に仕えました。石巻康保は、評定衆として後北条氏の政務に関わり、野庭関城城代として領地を治め、そして小田原城の防衛戦で武功を立てるなど、戦国時代の激動期において、様々な立場で後北条氏を支えた忠実な家臣でした。彼の事績は、戦国大名家とその家臣団の関係性や、当時の地方統治・城郭防衛のあり方を理解する上でも興味深い一例といえるでしょう。

脚注

（入力情報に含まれていないため、記載なし）

もう一度検索