石油元売

石油元売りの歴史と現状

日本の石油元売りは、戦後の石油配給統制から民営化を経て、現在の姿に至るまで、幾多の変遷を遂げてきました。本稿では、その歴史と現状、そして業界構造について詳細に解説します。

戦後の石油配給統制と元売制度の誕生

第二次世界大戦後、日本は長年に渡り石油の配給統制下にありました。1949年4月1日、この状況は一変し、石油元売制度がスタートします。政府が登録した業者だけが石油の卸売を担うという制度の下、国内での石油精製が再開されました。登録された元売業者は、精製設備や輸入基地を持ち、配給能力を有することが条件でした。当初は10社が登録され、その後、数社の増減を経て12社体制が確立しました。この頃、製油所を持たず、原油輸入と精製委託を行う元売は「純元売」と呼ばれていました。

流通構造と販売形態

石油の流通においては、「二者」と「三者」という販売形態が存在しました。「二者」は石油元売と販売店が直接契約を結ぶ形態、「三者」は元売と特約店、そして販売店という三者間で契約を結ぶ形態です。「三者」販売店はサブ店とも呼ばれ、その分類基準は元売ごとに異なっていました。戦後、石油元売は品質管理や出荷先管理の効率化のため、ローリーによる店舗への直接配送制度を普及させました。

配給規則廃止と業界再編

1952年、燃料油の配給・価格統制は廃止され、元売制度も消滅します。以降、「石油元売」は石油製品の一次卸事業者の総称となり、原油探鉱開発から物流までを手がける大企業を指すようになりました。軽油に関しては、1956年に軽油取引税が導入され、多数の業者が軽油元売業者として指定されました。

国際石油資本との関係と民族系元売

石油元売は、国際石油資本（メジャー）との資本関係によって、外資系と民族系に分類されていました。

企業再編と現在の状況

1980年代以降、国内燃料油需要の減少を受け、石油元売業界は再編を繰り返してきました。2020年7月現在、主要な石油元売は5社にまで減少しています。ENEOS、出光興産、コスモ石油、太陽石油、キグナス石油の5社が市場を寡占し、特にENEOSは国内シェアトップを誇ります。キグナス石油はコスモエネルギーホールディングスの資本参加を受けており、製品の大部分をコスモ石油から仕入れています。

ガソリンスタンドの現状

日本のガソリンスタンドは、これらの5社の直営店や特約店、販売店（スーパーディーラーを含む）に加え、大手総合商社系やJA系なども存在し、多様な形態で運営されています。2019年3月末時点での総数は30,070店に上り、商社系やJA全農もかなりのシェアを占めていますが、直営店の比率は増加傾向にあります。

まとめ

日本の石油元売りは、戦後の配給統制から自由化、そして企業再編を経て、現在の5社寡占体制に至っています。今後も需要変動や技術革新への対応が求められるでしょう。ガソリンスタンドの減少や再生可能エネルギーの普及といった外部環境変化も、業界の将来に大きな影響を与えるでしょう。石油元売各社の経営戦略や政府政策、そして消費者の選択が、今後の業界の動向を左右する重要な要素となるでしょう。

もう一度検索