国際石油資本

国際石油資本：寡占から競争へ、そして未来へ

国際石油資本、あるいは石油メジャーとは、石油の探鉱から生産、輸送、精製、販売までを垂直統合し、世界市場を寡占する巨大企業複合体のことを指します。莫大な資本力と政治的影響力を持つこれらの企業は、世界経済に大きな影響を与え続けてきました。

セブンシスターズの時代：独占と協調

第二次世界大戦後から1970年代にかけて、世界石油市場は「セブン・シスターズ」と呼ばれる7社によってほぼ独占されていました。エクソンモービル、シェル、BP、シェブロンといった現在も巨大企業として君臨する企業の多くが、この中に含まれています。その起源は、1911年に独占禁止法により分割されたジョン・ロックフェラー率いるスタンダード・オイルにまで遡ります。

分割されたスタンダードオイルから生まれた企業は、その後も様々な合意を結び、市場を支配しました。特に有名なのは、1928年に締結された「赤線協定」と「アクナキャリー協定」です。これらの協定は、旧オスマン帝国領内の油田開発と、世界市場におけるシェアの固定化を図るものでした。

これらの協定は、世界中の石油資源を事実上、セブン・シスターズがコントロールすることを可能にしました。また、需要予測と生産調整により、1960年代末までは原油価格は比較的安定していました。しかし、この体制は、産油国からの反発を招くことになります。

OPECの台頭と国有化

1960年代以降、産油国は自国の資源と利益を守るため、石油輸出国機構（OPEC）を設立しました。OPECの設立は、セブン・シスターズによる支配体制を崩し、原油価格決定権を産油国に移転させる大きな転換点となりました。1973年の第四次中東戦争を契機に、OPECは原油価格を大幅に引き上げ、第一次オイルショックを引き起こしました。

さらに、産油国は、次々と石油開発への国有化を推進しました。アルジェリアやリビアがフランスやイギリスの石油会社が所有する油田を国有化したことは、セブン・シスターズによる支配体制の終焉を告げる象徴的な出来事でした。

スーパーメジャーの出現と新たな競争

セブン・シスターズの時代が終わりを告げると、効率化と市場競争を目的とした合併・統合が相次ぎました。結果、エクソンモービル、シェル、BP、シェブロンの4社が、いわゆる「スーパーメジャー」として台頭しました。一部では、これらに加えトタルエナジーズやコノコフィリップスを加えた6社をスーパーメジャーと呼ぶ声もありましたが、これらの企業の世界における原油生産シェアは10%程度にとどまりました。

これは、合併による規模拡大よりも、株主還元や次世代エネルギーへの投資を優先した結果であり、リスクの高い新規油田開発への投資は減少しました。

新たな競争とエネルギー転換

2000年代以降、石油の上流事業には多くの企業が参入し、激しい競争が展開されるようになりました。一方、新興国におけるモータリゼーションの進展によって石油需要は増加する一方、先進国では省エネルギー化や代替エネルギーへの転換が進み、石油への依存度は低下傾向にあります。

新・セブンシスターズの登場

近年、ロシアや中国などの国営石油企業の存在感が増しています。これらの企業は、世界の原油生産と埋蔵量の30％を占め、かつてのセブンシスターズになぞらえて「新・セブン・シスターズ」と呼ばれることもあります。サウジアラムコ、ペトロナス、ペトロブラス、ガスプロム、CNPC、NIOC、PDVSAなどがその代表的な企業です。

国際石油資本の未来

国際石油資本の構造は、歴史的に見て常に変化を続けてきました。セブン・シスターズによる寡占体制から、OPECの台頭、スーパーメジャーの出現、そして国営企業の勃興まで、国際石油資本を取り巻く環境は常に変動してきました。今後、脱炭素化や地政学的リスク、エネルギー需給の変化などが、国際石油資本の構造と戦略に大きな影響を与えることが予想されます。企業は、これらの変化に柔軟に対応し、総合エネルギー企業への転換を加速させる必要があるでしょう。

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