石津光恵

石津 光恵

石津 光恵（いしづ みつえ、1914年4月16日生）は、戦前の日本陸上競技界において、主に投擲種目で傑出した才能を発揮した選手です。特に女子円盤投と砲丸投において、当時の日本記録を保持するなど、その時代の第一人者として知られています。また、彼女は広島県出身の女性として初めてオリンピックの舞台に立った、歴史的なアスリートでもあります。

競技経歴

石津は現在の広島県廿日市市に生まれ、山中高等女学校で陸上競技の道を歩み始めました。学生時代からその才能は際立っており、短期間のうちに国内トップレベルの選手へと成長します。

1931年には、日本陸上競技選手権大会において、女子円盤投と砲丸投の両種目で優勝を果たし、国内での地位を確立しました。同年11月に行われた明治神宮競技大会では、円盤投で新たな日本記録を樹立。さらに、砲丸投においては、当時の女性選手にとって一つの壁とされていた10メートルを超える記録（10.14メートル）をマークし、大きな注目を集めました。

これらの活躍が認められ、1932年に開催されたロサンゼルスオリンピックの日本代表に選出されます。18歳でオリンピックに出場した石津は、円盤投で7位、やり投で8位という成績を残しました。これは、広島県から輩出された女性アスリートとしては初のオリンピック出場であり、後進の選手たちに希望を与える快挙でした。

山中高等女学校を卒業した石津は、日本女子体育専門学校（現在の日本女子体育大学）に進学し、競技を続けました。1932年の日本選手権では、前年に続いて円盤投と砲丸投のタイトルを獲得し、二種目での連覇を達成しました。

その後も記録更新への挑戦は続き、1933年4月には関東学生選手権で円盤投の日本記録（36.81メートル）を塗り替え、同時に砲丸投では日本学生記録（10.25メートル）を樹立しました。さらに、1934年4月に美吉野運動競技場で行われた「女子オリンピック」と称された大会の砲丸投種目では、自身の持つ日本記録を再び更新する10.71メートルを投げました。

日本陸上競技選手権大会における円盤投種目では、1934年まで4年連続で優勝するという前例のない偉業を成し遂げました。円盤投の日本記録は生涯で3度にわたり更新しており、1935年10月の東京都陸上競技選手権大会で樹立した39.64メートルが、彼女のキャリアにおける最高記録となりました。

補足

同時代の著名な女性パイロットである馬淵テフ子もまた、かつては円盤投選手でした。馬淵が航空界で活躍していた頃、過熱した報道の中で、彼女がオリンピック選考会で石津に敗れたことがきっかけで空を目指したかのように語られるなど、両者のライバル関係が実際以上に強調されて報じられることがありました。しかし、実際の選考会では馬淵は3位であり、報道は多分にセンセーショナルな表現を含んでいたと考えられています。

石津光恵は、短い競技生活の中で数々の金字塔を打ち立て、日本の女子陸上競技、特に投擲分野の発展に大きく貢献したパイオニアの一人です。

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