石狩川 (小説)

石狩川

『石狩川』は、本庄陸男が1938年から1939年にかけて執筆した長編小説です。北海道開拓の苦難を、重厚な筆致で描いています。1938年9月から1939年3月にかけて、大井広介らの同人誌『槐』に連載されました。連載中には第8回芥川賞の候補にも選ばれています。その後、加筆と後半部の追加を行い、1939年5月に大観堂書店から単行本『石狩川』第1部として刊行されました。作者の病没により未完となったものの、その文学的価値は高く評価されています。

物語の背景

物語の舞台は、明治初期の北海道。仙台藩岩出山支藩の家老であった阿賀妻謙が、明治政府から開拓の許可を得て、家臣43世帯161名とともに北海道開拓に挑む姿を描いています。鬱蒼と生い茂る樹木や藪との戦い、特に開拓者たちを苦しめたのは、度々氾濫を繰り返す石狩川をはじめとする河川との闘いでした。また、開拓地を巡る役人との折衝や、厳しい請負工事の様子も、詳細な描写によって描き出されています。

連載と出版

『石狩川』は、同人誌『槐』に連載された後、単行本として出版されました。連載時には芥川賞の候補にも選ばれ、その文学的な評価は当時から高かったことが伺えます。単行本化の際には加筆が行われ、物語に深みが増しています。しかし、作者の早すぎる死により、物語は未完のまま幕を閉じることになりました。

舞台化と戦後の再刊

1939年には、村山知義の脚色・演出により、新協劇団によって舞台化もされました。戦後も再刊、増刷が重ねられ、1947年には60版を数えるほど、多くの読者に支持されました。しかし、第二次世界大戦直後の占領期に刊行された版は、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）による検閲を受け、「オロシヤ人の侵略」といった表現が削除・改変されています。これは、戦勝国となったソビエト連邦への配慮によるものとされています。

テレビドラマ化

1964年2月2日には、NHK総合テレビの「こども劇場」でテレビドラマ化もされています。鈴木瑞穂、武内亨、西国成男らが出演し、多くの視聴者に感動を与えました。

作品の意義

『石狩川』は、北海道開拓の歴史を背景に、人々の苦難と希望を描いた作品です。自然の脅威、開拓の困難、そして人間の強さを、力強い文章で表現しています。未完の作品ではありますが、その文学的な価値は高く評価されており、今日においても多くの人々に読まれ続けています。

関連情報

吾妻謙 (仙台藩): 主人公のモデルとなった人物
外部リンク
『石狩川』：新字新仮名 - 青空文庫
石狩川 - テレビドラマデータベース

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