石田周三

石田周三（いしだ しゅうぞう、1910年7月16日 - 1985年6月20日）は、日本の学術界において動物生理学の分野で顕著な功績を残した研究者であり、同時に一般の人々への科学知識の普及に情熱を注いだ啓蒙家でした。

経歴

宮城県仙台に生まれた石田は、東北帝国大学理学部で生物学を修めました。卒業後は研究者として、東北帝国大学に付設されていた浅虫臨海実験所などで無脊椎動物、特に二枚貝の生理に関する研究に従事します。1956年には「二枚介類における代謝型式」の研究により理学博士の学位を取得しました。その後、千葉大学文理学部へ移り、助教授、教授として教育・研究活動を進め、1974年に定年退官し名誉教授となりました。

研究と業績

石田博士の学術的な貢献は、二枚貝などの生理機能の解明にありました。並行して、科学知識を広く一般に伝える啓蒙活動に尽力します。その最も知られた業績の一つが、チャールズ・ダーウィンの不朽の名著『種の起原』の翻訳（内山賢次と共訳）です。この翻訳は、進化論という重要な科学思想を日本に紹介し、科学的理解の深化に大きな役割を果たしました。また、『生物の進化』、『生命の世界』といった自身の著作や、動物の行動、人類学、生化学など多岐にわたる分野の学術書・啓蒙書の翻訳を多数手掛け、難解な科学的概念を分かりやすく解説し、多くの人々の科学への関心を高めました。

家族

個人的な背景では、石田周三博士の妻である石田アヤ氏は、文化学院の創設者で知られる文化人、西村伊作の長女です。石田博士自身も妻アヤ氏との共訳書があるなど、文化的な繋がりがありました。娘の立花利根氏は1937年に生まれ、母方の祖父である西村伊作が創設した文化学院で副院長を務めるなど、教育分野で活躍しました。石田家のルーツを辿ると、祖父・石田秋水（市治）は仙台藩の養賢堂教師で書家、自由民権運動にも関与した人物です。父・石田武洲は愛国生命保険の支配人を務めていました。

石田周三は、動物生理学者としての研究活動と並行し、精力的な執筆・翻訳活動を通じて科学知識の普及と啓蒙に多大な貢献をしました。その生涯は、学術の発展と社会への科学教育の両面で、日本の科学文化に貴重な足跡を残しました。

主な著作・翻訳

『生物の進化』（1942年）
『生命の世界』（1943年）
『ダーウィン』（1947年）
エドワード・スチュワート・ラッセル『動物の行動・環境』（1937年、永野為武共訳）
『ダーウィン全集 第2 種の起原』（1939年、内山賢次共訳）
W.ハウエルズ『人間の来た道 人類学入門』（1950年、石田アヤ共訳）

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