石綿セメント管

石綿セメント管（Asbestos Cement Pipe, ACP）

石綿セメント管とは、アスベストを混ぜたセメントを用いて作られる耐圧性に優れた導水管です。この管は特に水道管として利用され、昭和初期からの日本での歴史を持ちます。本管は、その耐久性や耐薬品性から当初は鋳鉄管の代用品として人気を博しました。

歴史的背景

石綿セメント管の起源は1900年に遡ります。オーストリアの発明者、ルードウィッヒ・ハチェックがアスベストとセメントを組み合わせ、スレート材の製造法を開発。その後、イタリアの企業がこれを基にして1900年代初頭に管材の生産を開始しました。日本では、1931年に日本エタニットパイプが設立され、イタリアの技術を導入する形で国産化が進みました。

1930年代の日本では水道インフラの整備が急務となり、石綿セメント管の需要は急増しました。これに伴い、日本エタニットや秩父セメントが業界に参入。昭和中期には多くの自治体でこの管が利用されていました。しかし、戦争や経済の状況によって鉄材不足が続く中、石綿セメント管はその特性から一層重宝されることになります。

戦後も、安価で製造が容易な石綿セメント管は広範囲に使用されました。国はこの管に対し、日本工業規格（JIS）を制定し、品質基準も整備されました。主な規格には、JIS A 5301などがあり、水道用としての規格が設定されました。

健康リスクと規制

しかし、石綿セメント管に使用されるアスベストの健康への影響が次第に認識されるようになります。2005年には、クボタが兵庫県での健康被害を公表し、石綿との関連性が初めて公式に認められました。このことで社会的な反響を呼び起こし、石綿の取り扱いや撤去に関する新たな規制が導入されることになりました。

厚生労働省は、石綿セメント管の撤去作業における安全基準を定め、適切な管理と作業の実施が求められました。これにより、今なお残る石綿セメント管の取り扱いや安全性が注視されることとなりました。

製造方法と後継製品

石綿セメント管は、JISに基づいた特定の品質基準に沿って製造され、湿式の工程で作られます。現在では、この古い製法を改良した強化プラスチック複合管（FRPM管）が登場しています。これはガラス繊維と熱硬化性樹脂を使用し、経年劣化のリスクを軽減した製品です。強プラ管は、今でも導水管としての需要がありますが、同時に旧製品と同様の健康リスクを考慮する必要があります。

まとめ

石綿セメント管は長い歴史を持ちながらも、その健康リスクが顕在化する中で、現在では徐々に使用が制限されています。石綿を含むこの管は、過去のインフラ整備には重要な役割を果たしましたが、未来に向けての新しい技術への移行が求められています。自治体においては、いまだ石綿セメント管が残っているケースもあり、必要な対策が急務とされています。

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