石黒忠篤

石黒忠篤の生涯と業績

石黒忠篤（いしぐろ ただあつ）は、1884年1月9日に東京で生まれました。父は子爵の石黒忠悳であり、母は片貝村の初代村長の娘でした。彼は名門に生まれ育ちながらも、爵位を襲爵せず返上する道を選びました。教育面では、高等師範学校附属小学校からスタートし、東京帝国大学の法科大学を卒業後、農商務省に入省しました。

石黒は入省後すぐに農務局に配属され、その後の農政において重要な役割を果たしていきます。特に、1914年にヨーロッパへ農政研究のために留学したことは、彼の視野を広げる大きな契機となりました。その帰国後、彼は農務局の課長として小作問題に取り組み、小作慣行調査や小作調停法案の作成に注力します。これらの政策は、彼が「石黒農政」と称される所以となりました。

1931年には農林次官に就任し、以降も農林省にて重要なポストを歴任しました。特に満州移住協会や農業報国連盟の理事長として、大正から昭和初期にかけての農業振興に貢献しました。石黒は、農業の再建を目指し、戦前の農業政策における先駆者としてその名を広めることになります。

また、彼は戦争に対しいくつかの政策を打ち出し、日独伊三国同盟に反対するなど、当時の政府内でも珍しい姿勢を示しました。しかし、1941年には病気により農林大臣を辞任し、その後も貴族院勅選議員として活動を続けました。1945年の鈴木貫太郎内閣では再び農商大臣に就任しますが、公職追放により政治活動が制約されました。

政治的活動の傍ら、石黒は著述活動にも踊らかし、農政や農林行政に関する書籍を数多く出版しました。中には『農林行政』や『農政落葉籠』といった有名な著作もあり、これらは後の農政において重要な資料となっています。

彼の業績は、農業だけにとどまらず、経済全般、地域社会の発展にまで及びました。特に、憲法第27条の勤労義務条項が制定される際には、彼が中心となってその重要性を訴えたことで知られています。このように、石黒忠篤は、農政の神様としてその名を馳せ、戦後の日本においても多大な影響を与え続けます。

1960年3月10日、石黒は76歳でこの世を去りましたが、彼の農業に対する情熱と政策は今もなお人々の記憶に残り続けています。

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