砂川分水

砂川分水

砂川分水は、玉川上水から分水された用水路です。玉川上水の水量が減少したり、氾濫を引き起こす可能性があるため、分水は通常は認められることが少ないのですが、砂川村は深刻な水不足に悩まされており、村人たちの強い要望によって、明暦年間（1655年 - 1657年）に分水が実現しました。

歴史

砂川村は1627年（寛永4年）に開拓が始まりましたが、武蔵野台地は水利に乏しく、強風で赤土が家の中まで吹き込むような土地でした。分水が完成すると、砂川村はクワの栽培による製糸業や製茶業、ウドの生産などが盛んになり、新田村落として発展しました。

砂川分水は、玉川上水開削から3年後の1657年（明暦3年）に開削されました。玉川上水の分水は最盛期には33あったとされていますが、砂川分水は比較的早い時期に開削された分水の一つです。当初、分水は砂川村のみで使用され、その長さは約1里でした。

1870年（明治3年）の分水口改正により、取水口は立川市と昭島市の境界に近い松中橋に移設されました。この統合により、砂川分水に限らず多くの取水口が統合され、「砂川用水」とも呼ばれるようになりました。流域は立川市、国分寺市、小平市、小金井市、武蔵野市、三鷹市、調布市に及びます。

平坦な地形のため、流路は五日市街道沿いに直線的に流れ、かつては川幅は約182センチメートルもあり、水量も豊富でした。砂川用水沿いには多くの水車が設置され、傾斜を利用したり、落差を設けるなどの工夫をして動かしていました。1876年（明治9年）頃の記録では、川幅は約1.2メートル、長さは約6,390メートルでした。砂川村では、大正初期に用水を利用した村営の水力発電所の建設計画がありましたが、既存の電力会社の進出により実現しませんでした。

その後、道路拡幅などの影響で開渠部分が減少し、1958年（昭和33年）の記録では全長約26キロメートルとなりました。立川市内の分水は、昭島市との境界付近から天王橋までは遊歩道として利用されており、開渠部分は立川市内では玉川上水付近の一部に残るのみです。五日市街道沿いの流路は1960年代には歩道となり、水路を見ることはできなくなりました。

流域・ルート

1653年（承応3年）の開削当初、取水口は現在の稲荷橋上手（東京都立川市一番町4丁目3番地）にありましたが、1871年（明治3年）に一番町2丁目の松中橋上手に移設されました。天王橋から五日市街道に沿って農家の庭先を流れ、関野橋から南下し、小金井の畑地を通り、中央本線を境変電所付近で横断します。その後、小金井市、三鷹市を通り、三鷹市野崎から調布市に入り、深大寺、金子の水田の灌漑用水として利用されました。

全長は20.05キロメートルで、そのうち開渠部は8.01キロメートル（40％）、暗渠部は12.05キロメートル（60％）です。

利用・周辺の生活

砂川分水は、農業用水、生活用水として利用されました。明治10年代初めの砂川村では、450軒、2925人が飲料や生活用水として利用していました。昭和初期には、洗顔、米研ぎ、風呂、洗濯などにも使われ、分水を汚さないように注意し、村を挙げて川掃除を行っていました。しかし、同時に分水への転落事故も多かったようです。

昭和30年頃には、井戸や簡易水道が普及し、生活用水としての利用は減少しました。また、五日市街道の交通量が増加したため、安全を確保するために分水は暗渠化されていきました。

農業用水としては、分水口が統合された明治4年に、砂川村に4本の田用水が引かれました。作られた水田は多くはなく、明治10年代初めには耕地の0.7％、明治31年にはその1.6倍でした。余った田用水は、他の分水や、東京市、甲武鉄道に譲渡されました。甲武鉄道への譲渡は、立川駅舎を北に向けて作ることを条件にしたといわれています。

脚注

関連項目

恋ヶ窪用水

外部リンク

玉川上水今むかし 第８話 玉川上水の分水（４） -砂川分水・柴崎分水- 武陽ガス株式会社
玉川上水・分水網の構成と関連遺構に関する調査 玉川上水域研究会 (PDF) 公益財団法人とうきゅう環境財団（現：東急財団）
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