砒銅鉱

砒銅鉱：希少な銅の砒化鉱物

砒銅鉱は、化学組成式Cu₃Asで表される、銅を主成分とする砒化鉱物です。立方晶系に属しますが、結晶として産出することは稀で、通常はブドウ状や不規則な塊状を呈します。その外観は、強い金属光沢を放つ不透明な固体で、粉末になりにくいのが特徴です。モース硬度は3～3.5と比較的柔らかく、比重は7.2～8.1と重い鉱物です。

砒銅鉱は、アルゴドン鉱と同様に、元素鉱物に近い性質を持つ硫化鉱物として分類されます。これらの鉱物は、自然銅と共に産出することが多く、特に砒銅鉱、アルゴドン鉱、自然銅が混合した状態のものはモハウク鉱と呼ばれています。モハウク鉱は、それぞれの鉱物の割合によって、外観や性質が微妙に変化します。

砒銅鉱が初めて発見されたのは1845年、チリのコキンボにあるアルゴドン銀山でした。この鉱物を発見し、記載したのはドイツの著名な鉱物学者、ヴィルヘルム・フォン・ハイディンガーです。彼は、ポーランドの鉱物学者イグナシー・ドメイコに敬意を表し、この鉱物を「ドメイカイト（Domeykite）」と命名しました。ドメイコ自身も鉱物学に多大な貢献をした人物であり、彼の名前が鉱物名に残ることは、鉱物学の歴史において重要な出来事と言えるでしょう。

砒銅鉱は、産出量が少ない希少な鉱物であるため、詳細な分析や研究が進んでいない部分もあります。しかし、その独特な性質や産状から、地球科学や鉱物学の研究において重要な標本として扱われています。また、銅の資源として注目されることもあります。

砒銅鉱の産出地は、チリ以外にも、アメリカ合衆国、オーストラリア、カナダなど、世界各地に点在しています。しかし、いずれの産地においても、大量に産出されることは稀であり、標本として収集されることが多いです。

砒銅鉱は、その美しい金属光沢と希少性から、鉱物コレクターの間でも人気が高い鉱物の一つです。また、その化学組成や結晶構造は、地球内部における金属元素の挙動や鉱物形成過程の理解に役立つ情報をもたらしてくれます。今後の研究により、砒銅鉱に関する知見はさらに深まることが期待されます。

関連鉱物

アルゴドン鉱：砒銅鉱と同様に、銅と砒素からなる鉱物。
モハウク鉱：砒銅鉱、アルゴドン鉱、自然銅の混合物。

参考文献

Mindat.org (Location data)
Webmineral.com
* 各種鉱物学専門書

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