研成義塾

研成義塾について

研成義塾は、長野県南安曇郡穂高町、現在の安曇野市にかつて存在した私塾であり、その後旧制中学校となりました。この教育機関は無教会主義キリスト教徒の井口喜源治によって設立され、キリスト教に基づいた人格教育が行われました。ここでは、当時の教育のあり方や、井口の影響を受けた多くの人々の活動について振り返ります。

歴史の背景

研成義塾の起源は1891年に設立された東穂高禁酒会にさかのぼります。禁酒会の会員たちが学習の場を求め、その要望に応えて1898年に校舎が設立されました。初期には、禁酒会の指導者である相馬安兵衛や臼井喜代が理事を勤め、井口喜源治が教鞭を執ることになりました。この時、裁縫の科目のみ女性教師に委託される体制がとられました。

1901年には私立学校としての認可を受け、寄付により新たな校舎が建設されました。運営は月謝や寄付金に依存し、井口は私財を投じて学校の維持に努めました。また、公的資金による助成は受けず、教育方針に合わない寄付は一切受け付けない姿勢を貫いていました。

研成義塾には、内村鑑三や山室軍平など多くの著名なキリスト者が訪れ、講演を行いました。内村も1901年に講演を行い、その後の報告では多くの支持を得ていました。

塾生と国際的なつながり

明治40年代以降、井口の教えを受けた塾生たちの中には、アメリカやカナダに渡る者が70人を超えました。特にシアトルに移住した25名は「シアトル穂高倶楽部」を結成し、井口からの手紙を回し読みしていました。そして、大正2年に発行された機関紙『新故郷』により、彼らの活動や故郷の様子が伝えられました。また、地元の同窓生による「故山新報」が発行され、海外に住む塾生たちにも地域の情報が届けられました。

移民として渡米を希望する者が多く、旧制中学卒業程度の学力が条件であったため、研成義塾への入学希望者が増加しました。そして、学び舎での教育が、彼らの人生に多大な影響を与えることとなりました。

休校から閉校へ

しかし、昭和7年（1931年）には井口の健康状態の悪化により急遽休校となります。そして1938年に閉校が認可されるまでには、約800名の塾生が卒業を果たしていました。その後、跡地には「研成義塾跡」の碑が建立され、地域の歴史として今でもその名が語り継がれています。2008年には、この地の教育文化の重要性が認められ、安曇野市の有形文化財に指定されました。

教育理念と内容

研成義塾の設立趣意書では、「文明風村塾の真の教育を施さんがため」という目標が示され、家庭的な環境を重視し、宗派に干渉せず、教育の質を一貫して維持することが校の目的とされました。初期には約180坪の敷地に教室や裁縫室が整備され、旧制中学校の前期課程や補習科、研究科が設けられました。教育内容にはキリスト教教育が取り入れられ、朝礼や賛美歌、聖書を学ぶ時間が設けられていました。大正11年以降は、正式に旧制中学校の教育課程が導入されました。

主な出身者

研成義塾からは多くの優秀な人材が巣立ち、清沢洌や東條たかし、山本安曇、平林俊吾（後にゴードン・ヒラバヤシが有名に）などがその代表的な人物です。彼らはそれぞれの分野で活躍し、地域や社会に多大な影響を与えました。

このように、研成義塾はただの学舎ではなく、地域の文化と教育の礎を築いた重要な存在であり、その理念と歴史は今でも語り継がれています。

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