硝酸ストロンチウム

硝酸ストロンチウム：性質、製造、用途

硝酸ストロンチウムは、ストロンチウムイオン(Sr²⁺)と硝酸イオン(NO₃⁻)から構成される無機化合物です。化学式はSr(NO₃)₂で表され、日本国内では消防法により危険物第一類（硝酸塩類）に分類されています。

製造方法

硝酸ストロンチウムは、主に以下の二つの方法で合成されます。

1. 水酸化ストロンチウムと硝酸の中和反応: 水酸化ストロンチウムSr(OH)₂の水溶液に硝酸HNO₃を加えることで、中和反応を起こし硝酸ストロンチウムが生成します。この反応は、水と硝酸ストロンチウムを生成する発熱反応です。

Sr(OH)₂ + 2HNO₃ → Sr(NO₃)₂ + 2H₂O

2. 炭酸ストロンチウムの硝酸への溶解: 炭酸ストロンチウムSrCO₃を硝酸に溶解させることによっても合成できます。この反応では、二酸化炭素と水が副生成物として発生します。

SrCO₃ + 2HNO₃ → Sr(NO₃)₂ + CO₂ + H₂O

生成した硝酸ストロンチウムの水溶液を濃縮すると、温度によって結晶の状態が変化します。29.3℃以下では四水和物として、それ以上の温度では無水物として析出します。再結晶によって精製することができます。

物理的性質

硝酸ストロンチウムは無色の結晶性固体です。結晶構造は、無水物では立方晶系、四水和物では単斜晶系となります。水や液体アンモニアには容易に溶解しますが、エタノールやアセトンには溶解度が低く、難溶性です。水に対する溶解度は、硝酸バリウムよりも大きく、硝酸カルシウムよりは小さい値を示します。そのため、硝酸カルシウムのような潮解性（空気中の水分を吸収して溶ける性質）は見られません。

融点以上では分解反応を起こし、酸化ストロンチウムSrO、二酸化窒素NO₂、酸素O₂を生成します。

2Sr(NO₃)₂ → 2SrO + 4NO₂ + O₂

[ラット]]を用いた実験データによると、[[半数致死量]は体重1kgあたり540mgと報告されています。

用途

硝酸ストロンチウムは、深紅色の炎色反応を示すため、主に以下の用途で使用されています。

花火: 花火の火薬として用いられ、鮮やかな深紅色を発色させます。
発火信号: 発火信号にも使用され、遠方からでも視認できる鮮やかな発光を可能にします。
マッチ: マッチの製造にも使用されることがあります。
医薬品: 一部の医薬品にも使用されていますが、詳細な用途は公開情報からは特定できません。

硝酸ストロンチウムは、その特性から様々な用途で使用されている重要な化合物です。しかしながら、危険物に指定されているため、取り扱いには注意が必要です。

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