碑衾町

碑衾町（ひぶすままち）

碑衾町は、東京府荏原郡に存在した町で、現在の目黒区南部に位置していました。町名は、この地にあった「碑文谷」と「衾」の二つの地域名に由来し、東急東横線沿線を中心として発展しました。

歴史

町の成立

1889年（明治22年）5月1日、町村制の施行により、碑文谷村の全域と衾村の一部が合併し、碑衾村が発足しました。衾村の残りの地域は玉川村に編入されました。この合併により、新たな自治体としての歩みが始まりました。

関東大震災後の変化

1923年（大正12年）の関東大震災は、碑衾町にも大きな影響を与えました。東京市方面からの移住者が急増し、町の人口は大きく増加しました。この人口増加は、町の発展を加速させる要因となりました。

町制施行と庁舎建設

1927年（昭和2年）4月1日、碑衾村は町制を施行し、碑衾町となりました。その前年の1926年（大正15年）12月17日には、鉄筋コンクリート2階建ての新庁舎が竣工し、町の行政機能の充実が図られました。

町名変更の計画と東京市編入

1931年（昭和6年）4月1日、碑衾の読みが難解であるとの理由から、町名を公募で「朝日町」に改名する計画がありました。しかし、東京市への編入が現実味を帯びてきたため、この計画は立ち消えとなりました。

大字の成立

1932年（昭和7年）6月16日には、大字衾の一部から大字自由ヶ丘が成立しました。同年9月10日には、大字碑文谷の一部から大字鷹番、三谷、本郷が成立しました。これらの大字の成立は、町内の地域区分を明確にするものでした。

東京市への編入と消滅

1932年（昭和7年）10月1日、荏原郡全域が東京市に編入され、碑衾町の区域は目黒区となりました。これにより、碑衾町は自治体としての歴史を終え、東京市の一部として新たなスタートを切ることになりました。

歴代村長・町長

碑衾村から碑衾町にかけて、以下の5名が村長・町長を務めました。

初代：栗山久次郎
二代：小杉信太郎
三代（町長）：角田光五郎
四代：野崎小十郎（海軍少将）
五代：中野浩

経済

産業

農業

碑衾村では、農業が主要な産業でした。『大日本篤農家名鑑』には、栗山、河原、井上などが篤農家として記載されています。『日本紳士録』には、栗山、小杉などが農業を営む人物として記録されています。

商工業

栗山銀右衛門（漬物商）
小杉慶壽（白米商）

交通

鉄道

東京横浜電鉄（現東京急行電鉄）
東横線：碑文谷駅 - 府立高等駅 - 自由ヶ丘駅
目黒蒲田電鉄（現東京急行電鉄）
大井町線：中丸山駅

道路

目黒通り
駒沢通り

名所・旧跡

八雲氷川神社
碑文谷八幡宮
熊野神社
円融寺
高木神社
金蔵院
常円寺
東光寺
正泉寺
立源寺
北野神社
碑文谷鬼子母神

地域

大字

大字碑文谷
字東原、金杉原、月光原、向原、池ノ上、谷頭、六畒割、唐ヶ崎、鷹番、五本木前、馬引沢境、北三谷、三谷、田向、門前、東池ノ下、法界塚下、金杉下、十羅刹下、下山、中丸、池ノ谷、南原、原、大門東、寺前、子ノ神、子ノ神前、三合塚、道京塚、宮ノ久保、安藤山、上ノ台、本郷後、本郷、本郷前、寺西、池ノ下、殿山、西ノ前
大字衾
字平南大岡山、平北大岡山、平鉄飛、平前、平南原、平北原、平稲荷丸、東柿ノ木坂南、東三谷、東柿ノ木坂北、東下通、東寺山、東上原、東天沼、東中通、東谷戸、東曽根、東中丸、東中原、東下原、東下芳窪、東上芳窪、東大原、東梶屋敷、東池淵、東前原、東水窪、中宮ヶ谷、中化坂、中一ッ木、中宮前、中根西、中坂口、中寺前、中本村、中寺郷、中関根、中里、谷上台、谷畑東、谷畑中、谷東前、谷畑西、谷灰野良、谷山野、谷鷺草、谷權現前、谷向下、谷畑下、谷二枚橋、谷石川端

現在の地名

大岡山、柿の木坂、自由が丘、洗足、平町、鷹番、中根、原町、東が丘、碑文谷、緑が丘、南、目黒本町、八雲、中央町一丁目（いずれも大体の範囲）

教育機関

東京高等工業学校（1924年4月移転）→東京工業大学（1929年4月昇格）
府立高等学校（1932年4月移転）
洗足高等女学校
碑衾町青年訓練所
八雲青年訓練所
碑商業実務学校
八雲商業実務学校
碑実務女学校
八雲実務女学校
碑尋常高等小学校
八雲尋常高等小学校
大岡山尋常小学校
向原尋常小学校
自由ヶ丘学園尋常小学校
大岡山幼稚園

出身・ゆかりのある人物

石田武太郎（中外商業新報政治部長、碑衾町会議員） - 俳優石田純一の祖父。
石田武（NHKアナウンサー）
栗山久次郎（地主、農業、篤農家、碑衾村長）
栗山徳蔵（地主、農業、碑衾町会議員、目黒区会議員）
栗山政五郎（地主、農業、碑衾町会議員）
富岡惟中（工学博士、技師）
富岡有象（医学博士、医師）

参考文献

大日本篤農家名鑑編纂所編『大日本篤農家名鑑』大日本篤農家名鑑編纂所、1910年。
『早稲田大学校友会会員名簿 大正14年11月調』早稲田大学校友会、1915-1925年。
交詢社編『日本紳士録 第34版』交詢社、1930年。
交詢社編『日本紳士録 第36版』交詢社、1932年。
東京市臨時市域擴張部 『荏原郡碑衾町現状調査』 1931年。
東京府荏原郡碑衾町役場 『市郡合併紀年 碑衾町誌』 1932年10月1日発行。
小林編纂部 實側 『東京府荏原郡碑衾町全圖番地界入』 1930年4月。

関連項目

* 東京都の廃止市町村一覧

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