碧南市民図書館

碧南市民図書館は、愛知県碧南市鶴見町の「へきなん芸術文化村」内にある公共図書館です。その歴史は古く、1912年（大正元年）に新川尋常高等小学校に併設された新川文庫にまで遡ります。幾度かの移転や改称を経て、現在の碧南市民図書館に至っています。

歴史

碧海郡新川町時代 (1912-1948)

図書館の起源は、1911年（明治44年）に新川尋常高等小学校の板倉松太郎校長が、当時の新川町長に文庫設立を願い出たことに始まります。翌1912年（大正元年）11月1日、新川尋常高等小学校附設新川町立新川文庫として開館し、板倉校長が初代文庫長を兼任しました。板倉校長の死後には、その蔵書が寄贈され、蔵書内容が充実しました。1925年（大正14年）には、蔵書数6,588冊を誇り、年間経費544円のうち350円を図書購入費に充てていました。当時の年間閲覧者数は1,358人、1日平均5.2人でした。

碧南市時代 (1948-)

新川支所時代 (1948-1962)

1948年（昭和23年）9月15日、碧海郡の新川町、大浜町、棚尾町、旭村が合併し、碧南市が誕生。これを機に、碧南市立図書館が新川文庫を母体として設立されました。当初は、碧南市役所新川支所内に図書館が置かれ、同年9月24日には連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）愛知軍政部のマギー少佐も出席して開館式が行われました。1950年（昭和25年）には図書館法が施行され、碧南市は同年12月26日に図書館法に基づく碧南市立図書館設置条例を制定。1951年（昭和26年）には閲覧料を廃止し、1954年（昭和29年）からは保証金を支払うことで館外貸出が可能になりました。開館時間は季節によって異なり、休館日は毎週金曜日、祝日、毎月末日などでした。1961年（昭和36年）には読書感想文コンクールが初開催され、1998年（平成10年）まで継続されました。

青年会館時代 (1962-1969)

1962年（昭和37年）4月10日には、中山公園内に新築された青年会館へ移転しました。この移転により、高校生や大学生の利用者が増加した一方、児童の利用者は減少しました。1964年（昭和39年）には複写サービスを開始、1969年（昭和44年）には貸出方式をブラウン方式に変更しました。

源氏神明町時代 (1969-1993)

1968年（昭和43年）には、碧南市制20周年記念事業として、源氏神明町に図書館の単独館が建設されることになり、1969年（昭和44年）11月18日に竣工しました。開館当初から冷暖房が完備されていました。1971年（昭和46年）には特許庁から産業資料センターに指定され、西三河地方初の特許公報類公開閲覧所が開設されました。1972年（昭和47年）には図書の予約サービスを開始、1981年（昭和56年）には貸出冊数を5冊に増やしました。1991年（平成3年）には碧南市民図書館に改称し、南部分館を開設。1995年（平成7年）には近隣5市との広域貸出を開始しました。1990年代には図書館利用者が増加し、1人あたりの貸出冊数も大幅に増加しました。

へきなん芸術文化村時代 (1993-)

1988年（昭和63年）には碧南市立図書館兼コミュニティセンター建設計画検討委員会が設置され、1993年（平成5年）7月17日、「へきなん芸術文化村」が開村しました。この施設は碧南市民図書館と碧南市芸術文化ホールで構成されており、総工費は約75億円です。開館時の蔵書数は、一般書136,395冊、児童書27,317冊、地域資料7,864冊などでした。1995年（平成7年）には日本図書館協会建築賞を受賞しています。1998年（平成10年）には開館時間を延長、2000年代にはインターネットサービスの導入や予約サービスの拡充が行われました。2013年（平成25年）には総入館者数が500万人を達成し、2014年（平成26年）には広域貸出の範囲が拡大されました。

施設

碧南市民図書館

「へきなん芸術文化村」は名鉄三河線北新川駅から徒歩5分に位置しています。図書館はガラスを多用した扇型の外観が特徴で、鉄骨鉄筋コンクリート造の地下1階地上2階建てです。蔵書収容能力は40万冊です。1階には一般書、レファレンスコーナー、AVラウンジ、新聞・雑誌コーナーがあり、2階には児童書、おはなしのへや、ボランティア・読書会室などがあります。地下には閉架書庫があります。図書館では、絵画の複製や珍しいおもちゃの貸し出しも行っています。また、読書席や和室、社会人専用室なども用意されています。

分館・公民館図書室

1976年（昭和51年）以降、公民館に貸出文庫が設置されました。1970年（昭和45年）には移動図書館サービスが開始されましたが、1984年（昭和59年）に公民館の貸出文庫の充実に伴い廃止されました。1991年（平成3年）には初の分館である南部分館が開設され、旧館は1995年（平成7年）に中部分館として再開館しました。

特別コレクション

豆本

2007年（平成19年）から豆本の収集が開始されました。「名古屋豆本」や「洋酒マメ天国」など、貴重な豆本を所蔵しており、一部は貸出可能です。

近藤坦平旧所蔵本

碧南市出身の蘭方医、近藤坦平の旧蔵書をコレクションしています。近藤は西洋医学塾「密峰義塾」を設立し、地域医療に貢献しました。

脚注

参考文献

「県内公共図書館の紹介碧南市民図書館」『年魚市』第6号、愛知県図書館、1994年。
「碧南市民図書館の開館に至るまで」『中部図書館学会誌』、中部図書館学会、1994年3月。
鶴ヶ崎区平成5年度部長会『新川町発足100周年記念事業この街この人 100年』奥谷弘和、1997年。
碧南市教育委員会『へきなんの教育平成29年度版』碧南市、2017年。
碧南市史編纂会『碧南市史第三巻』碧南市、1974年。
碧南市史編さん会『碧南市史第四巻』碧南市、1998年。
碧南事典編さん会『碧南事典』碧南市、1993年。
碧南市民図書館『碧南市の図書館 2017』碧南市民図書館、2017年。

碧南市民図書館