磯川勝彦

磯川勝彦：明治から昭和初期を駆け抜けた俳優の生涯

磯川勝彦（いそかわ かつひこ、1882年5月15日 - 没年不詳）は、日本の俳優である。本名は磯貝子之助（いそがい ねのすけ）、旧芸名は磯川元春（いそがわ もとはる）と、複数の名前で知られている。

早期経歴と舞台での活躍

1882年、東京府東京市本郷区に生まれた磯川は、幼少期に父を亡くしている。父は「沢村源之助」とされるが、これは初代から三代目までの沢村源之助が江戸時代にすでに没していること、四代目沢村源之助の没年が1936年であることを考慮すると、史実とは食い違う可能性がある。17歳で父の遺志を継いで実業に従事するも、演劇への強い情熱から川上音二郎一座に参加。明治32年秋、17歳で東京・新富座の舞台に立ち、その後、伊井蓉峰一座、井上正夫一座と、著名な劇団を渡り歩く。新派の舞台で経験を積み、大阪に移ってからは松竹の専属俳優として、新声劇や国精劇といった革新的な演劇にも出演した。

映画界への転身と日活での活躍

1927年、45歳の時、磯川は京都の日活大将軍撮影所時代劇部に入社。同年9月、『鳴門秘帖 最終篇』で「磯川元春」の名で映画界にデビューを果たす。その後、日活太秦撮影所に移り、『建国史 尊王攘夷』など数々の時代劇作品に出演。1932年からは「磯川勝彦」と改名し、活躍の幅を広げる。組田彰造監督作品『天兵童子』シリーズにも出演しているが、1941年の『天兵童子 第四話 甦る力』を最後に、彼の消息は途絶える。

晩年と不明な点

1979年発行の『日本映画俳優全集・男優編』では、磯川勝彦は既に故人とされている。また、1940年には、京都市上京区の法輪寺に日活太秦撮影所長であった池永浩久の発願により、映画関係者400名以上の霊牌が奉納されたが、その中に磯川の霊牌もあったと伝えられる。しかしながら、正確な没年は不明なままである。

フィルモグラフィ

磯川勝彦の出演作品は非常に多く、日活太秦撮影所、日活京都撮影所で数々の時代劇作品に出演している。彼の出演作は、サイレント映画からトーキー作品まで多岐に渡り、主役から脇役まで幅広い役柄を演じている。以下に、代表的な出演作品を列挙する。このリストは網羅的なものではない可能性がある点に注意が必要である。

日活太秦撮影所/日活京都撮影所

『鳴門秘帖 最終篇』(1927) - 船大工大助（磯川元春名義）
『建国史 尊王攘夷』(1927) - 安藤帯刀（磯川元春名義）
『沓掛時次郎』(1932) - 八丁畷徳兵衛
『丹下左膳余話 百万両の壺』(1935) - 峰丹波
『大菩薩峠 第一篇 甲源一刀流の巻』(1935) - 逸見利恭
『恋山彦 風雲の巻』『恋山彦 怒濤の巻』(1937) - 八橋検校
『血煙神田祭』(1940) - 太兵衛
『天兵童子』シリーズ(1941) - 銅人

このリストには、東京国立近代美術館フィルムセンターなどに現存する作品、役名、クレジット名（磯川元春、磯川勝彦）なども記載されている。

まとめ

磯川勝彦は、舞台から映画へと活躍の場を移し、数多くの作品に出演した実力派俳優であった。その華々しい活躍の裏には、不明な点も多い晩年が隠されている。彼の生涯は、時代劇黄金期の日本の映画史において、重要な一ページを飾っていると言えるだろう。彼の功績は、後世に語り継がれるべきものである。

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