磯野直秀

磯野直秀（いその なおひで、生年：1936年3月8日 - 没年：2012年7月9日）は、日本を代表する動物学者であり、博物学史の研究者でもあります。東京出身の磯野は、1959年に東京大学理学部生物学科動物学専攻を卒業し、続いて1964年には同大学院の博士課程を修了しました。この際、彼は「ウニ卵の五炭糖リン酸回路」についての研究で理学博士号を取得しました。

その後、磯野は1965年から東京都立大学で助手としてのキャリアをスタートさせました。その後1977年には慶應義塾大学理工学部の助教授、1981年には教授に昇進し、2002年に定年退職後は名誉教授として教鞭を執り続けました。彼の研究は、古文書に記載された動植物に関する記述や図に注目し、「日本博物誌総合年表」を発表するなどして、その成果を世に示しました。

磯野の著作は多岐に渡り、1974年には『ヒトと人間 文明の発達と生きものとしての人間』を出版し、生物と人間の関係について考察しました。また、同年には『物質文明と安全 生きものの立場から』も刊行し、環境問題にも触れています。1975年に発表した『化学物質と人間 PCBの過去・現在・未来』は、化学物質が私たちの生活に及ぼす影響を追及しました。

さらに、動物学の歴史を辿る『三崎臨海実験所を去来した人たち 日本における動物学の誕生』や、博物学に関する体系的な文献として『日本博物誌年表』、そして同じく『日本博物誌総合年表 索引・資料編』と『日本博物誌総合年表 総合年表編』といった重要な書籍を執筆しました。これらの書籍は、日本の生物学や博物学の教育・研究に大きな貢献を果たしました。

磯野はまた、共著や翻訳にも力を注ぎました。1976年にはH.A.シュレーダーの『重金属汚染 何がどう恐ろしいのか』を訳し、異なる視点から環境問題に対する理解を深めました。その他にも、遺伝子工学に関する書籍や現代進化論に関する翻訳を手掛け、国際的な視野からの科学の普及を図りました。

磯野直秀氏は、2012年に脳内出血により亡くなりました。彼の逝去は、日本の科学界にとって大きな損失でした。彼の功績は、研究だけでなく、教育の分野においても高く評価されています。遺族は彼の蔵書や研究ノートを大阪市立自然史博物館に寄贈し、磯野氏の業績を後世に伝える活動が続いています。

彼の教授としての姿勢や研究内容は多くの学生や同僚に影響を及ぼし、その影響は現在もなお生き続けています。磯野氏の知識や情熱は、科学の発展に寄与しただけでなく、多くの人々に自然への理解を深めるための道しるべとなりました。

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