社会分業論

社会分業論

『社会分業論』は、フランスの社会学者エミール・デュルケームによって書かれた重要な社会学の著作です。この書籍では、社会がどのように分業によって発展していくのか、またその発展が社会的および道徳的側面にどのような変化をもたらすのかが議論されています。

デュルケームの考えによると、社会の分業は、産業の発展や人口の増加と密接に関連しています。特に、交通手段の向上や経済の一極集中が進むことによって、従来の環節的社会の構造が崩壊していく過程が詳細に説明されています。環節的社会とは、各メンバーが似たような役割を持ち、同じ目的に向かって統一されている形態を指しますが、分業が進むことにより、個々の役割が専門化し、メンバーそれぞれの特性が際立ってきます。

分業が進むことで、職業においては専門性が高まり、労働者は次第に個性化されていきます。この個性化は、組織内の均一性が薄れ、各自の専門性が求められる状況を生み出します。その結果、従来のように組織が構成員の均一性によって成り立つのではなく、各メンバーの異質性が相互に必要とされる新しい形が登場します。

デュルケームは、社会分業が発展することで形成される「有機的連帯」という概念にも注目しています。これは、メンバーがそれぞれ異なった役割を果たしながらも、相互に依存し合うことで、社会全体が一つの有機体のようにまとまっていく様子を示しています。各成員が異なる個性を持ちつつも、その役割が全体に貢献していることで、新しい形の協力関係が築かれていくのです。

このように、『社会分業論』は、単なる経済や労働の変化を越え、社会における個々の役割とその相互作用の重要性を明らかにしています。現代社会において、これらの理念は企業や組織の運営、人間関係の形成に深く影響を与えていると言えるでしょう。この著作を通じて、デュルケームは社会学の基礎を築き、後の研究者たちに多大な影響を与え続けています。

参考文献

• - 井伊玄太郎訳『社会分業論』上・下（講談社学術文庫、1989年）ISBN 4-06-158873-7 / ISBN 4-06-158874-5
• - 田原音和訳『社会分業論 復刻版』（青木書店、2005年）ISBN 4-250-20506-1
• - 新版『社会分業論』（ちくま学芸文庫、2017年）ISBN 4-480-09831-3

外部リンク

• - 社会分業論 とは
• - 鈴木智之「連帯概念と連帯的社会像 : Ｅ. デュルケーム『社会分業論』の主題と論理構成をめぐって」『慶応義塾大学大学院社会学研究科紀要 : 社会学心理学教育学』第30巻、慶應義塾大学大学院社会学研究科、1990年、63-71頁。

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