社会性

社会性とは

社会性とは、人が集団を形成し生活しようとする基本的な傾向を指します。これは、本能的なものと捉える説もあり、人間関係を築き、社会生活を円滑に送る上で不可欠な要素です。社会性は、対人関係における情緒や性格などのパーソナリティの側面であり、社会化の過程を通して獲得されます。

概念

社会性は、社会的コンピテンスや社会的スキルといった言葉と類似した意味で用いられますが、研究者によって定義が異なるため、明確な定義はありません。児童[[心理学]]では、精神発達を知的発達と社会的情緒的発達に大別し、社会性の発達を精神発達の重要な側面として捉えます。社会性の欠如は、精神薄弱児の知的能力の遅れの一因とされることもあります。また、情緒障害や自閉症など、社会性の異常が見られるケースも存在します。

発達心理学では、社会性を具体的に以下の要素で捉えています。

対人行動: 他者を信用し、受け入れる能力
集団行動: 集団の中で協調的に行動できる能力
社会的欲求: 仲間から好意を得たい、仲間として認められたいという欲求
社会的関心: 時代の情勢や風潮への関心

これらの要素は、社会性の発達を測る心理学的判断基準として用いられます。社会性の獲得メカニズムは、模倣、同一視、観察学習、愛着など様々な視点から研究されています。しかし、社会性が高い人ほど他者に騙されやすい傾向があるなど、デメリットも存在します。

重松俊明は、パーソナリティ発達には分化と統合の両面があり、社会化は分化、個別化は統合に対応するとしました。社会化は、社会的な分化と相互作用の拡大に対応したパーソナリティ発達の過程であり、その結果として社会性が形成されると考えられます。

社会性は社交性と混同されがちですが、社会性（sociality）と社交性（sociability）を区別する考え方もあります。

社会性の発達

社会性の発達は、社会的行動の発達であり、子供の成育過程における社会化の過程です。初期段階では、母親をはじめとする家族、そして家族以外の人々との関わりを通して社会性が発達していきます。また、成長に従って人間関係も変化していきます。

乳児期

生後6～8週頃から、子供は他者の存在を認識し、人の声や視線に微笑みかける反応を見せ始めます。3ヶ月頃になると、人を見つめたり、人が立ち去ると泣き止んだりといった社会的行動が現れ、人への関心が高まります。最初の対人関係は、最も接触頻度の高い母親との間に形成されます。その後、家族へと認識範囲を広げ、見知らぬ人に対しては人見知りをするようになります。この時期までに他人の表情を理解できるようになります。母親との安定した愛着は、他者への信頼感の基礎となり、その後の人間関係において重要な役割を果たします。

子供同士の社会的反応は、大人に対するものよりも遅れて現れます。生後4～5ヶ月頃に、他の乳児の泣き声に反応する程度です。9～13ヶ月頃には、他の子供を探索したり、声や簡単な行動を模倣したりするようになります。

幼児期

1歳前後になると、運動能力が発達し、母親に依存しながらも環境への探索行動が活発になります。言葉と運動能力の発達に伴い、子供は次第に親から心理的に分離し、自律的な傾向を身につけていきます。

2～3歳になると、言語の習得により自己意識が明確になり、自分の意図に基づいた行動が増えます。生理的欲求が中心だった乳児期から、知覚の発達に伴い外界と自己が分化し、独立、成就、社会的承認への欲求が生まれます。この時期には、親の権威に対して反抗する行動や自己主張が見られます。これは、いわゆる反抗期と呼ばれるもので、3～4歳にピークを迎えます。

親子関係が依存的なままだと、社会性が育たず、自己中心的でわがままな子供になる可能性があります。子供同士の接触は生後6ヶ月頃から見られ始め、1歳を過ぎると関心も強まりますが、一人遊びの段階ではおもちゃの奪い合いが多く見られます。2歳頃になると、友達の訪問を喜んだり、一緒に遊ぶことに興味を示し、おもちゃを社会的な関係を築く手段として使うようになります。3歳頃には、同じ年頃の子供と遊びたいという社会的要求が現れ、子供同士の関係を処理する中で社会性を育んでいきます。

幼児期における友達関係は、その後の社会性発達において重要です。3歳頃には喧嘩が多く見られますが、これは子供が自己主張を学び、他者の立場を理解する上で必要な過程です。4歳頃になると、大人の要求に従って欲求を満たす方法を学習し、自己主張や反抗が減少し、5歳以降は大人に対して協調的になります。この頃には、大人への関心が低くなり、子供への関心が高まります。1歳半頃には3人の集団を形成できるようになり、3歳までには2人組で接することが多くなります。3歳以降は友達との関わりが活発になり、遊びの内容も複雑になります。4歳頃には3人、5～6歳頃には5～6人程度の集団で遊べるようになります。

児童期

就学児童の社会構成は、幼児期と変わらず集団が並立している状態から始まり、学年が上がるにつれて有機的な集団へと変化していきます。子供の考え方は所属集団に同調するようになります。山下俊郎は、児童の社会性の発達を研究し、10歳以下の児童は一定の形式を持つ遊びを好むが、10歳以上の児童は自由な活動を好むと結論づけました。

青年期

山下俊郎は、女児は11～13歳、男児は14～16歳の時期に集団活動を嫌い、孤独になろうとする消極期があるとしました。青年期に入ると、親や教師からの独立欲求が高まり、反抗的な態度をとることがあります。仲間との関係を重視する一方、仲間内での力関係に安堵感を得られず、真の理解者を求めるようになります。この時期には、特定の人物への献身的な崇拝や恋愛感情が生まれることもあります。青年は、孤独を通して自己意識を強め、理想を追求するようになります。そして、現実世界へ働きかけようとする中で、社会的関心を高め、現実主義者へと変化していきます。

まとめ

社会性は、人が社会生活を送る上で欠かせない能力であり、発達段階に応じてその内容や形態を変化させます。社会性の発達を理解することは、円滑な人間関係を築き、社会生活に適応していく上で重要です。

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