社名表示灯

社名表示灯（タクシーのあんどん）とは

社名表示灯は、日本のタクシーの屋根上に設置されている表示灯のことです。本来の用途から防犯灯とも呼ばれ、また、海外のタクシーの屋根上表示を含めて、俗にあんどん（行灯）とも呼ばれます。タクシーの象徴として、その存在は広く認知されています。

目的と役割

社名表示灯の主な目的は、タクシーであることを周囲に知らせることです。日本では、都市部を中心に、空車時には点灯し、実車時には消灯することで、乗客への配慮も行っています。

同一の事業者や協同組合に所属するタクシーは、同一の社名表示灯を搭載するのが一般的です。グループ会社では、意匠を共通化し、社名表記のみが異なる場合が多く見られます。個人タクシーの場合は、同じ組合連合会に所属する事業者が、同一意匠の表示灯を使用します。

社名表示灯には、個々の車両番号（社番または無線番号）が表記されることもあります。海外では、「TAXI」と表示したり、「空車」を表示するタイプもあります。

同一グループで地域も同じ場合、ランプの色で区別することがあります。例えば、名鉄グループの北陸交通と石川交通は、石川県内で営業しており、菱形の社名表示灯に「北交」「石交」と表記して区別していましたが、夜間は判別が難しいため、北陸交通は白、石川交通は緑のランプを点灯させていました。現在は北陸交通がタクシー事業から撤退し、石川交通は白ランプを使用しています。

中型車と小型車が混在する地域では、小型車であることを示す表示灯が別に設置されることがあります。また、かつては禁煙タクシーを示す表示灯や、サービスの違いを示す表示灯（初乗り料金の違い、遠距離割引、クレジットカード利用可など）も存在しました。

さらに、社名表示灯は、周囲に異常を知らせる役割も担っています。赤く点滅している場合は、車内で異常が発生していることを示します。

起源と歴史

社名表示灯の起源は、昭和20年代にタクシー強盗が多発した時期に、乗務員を強盗から守るために取り付けられた赤く点滅する「防犯灯」にあります。当初は電球をカバーで覆っただけのシンプルなものでした。

1954年、武内工業所の初代社長である武内金弥が、この防犯灯に社名を入れることを考案し、現在の社名表示灯が誕生しました。ぼんやりと光る社名灯は、行灯のように見えたことから「あんどん」と呼ばれるようになりました。

現在の社名表示灯

現在では、識別性を向上させるため、大型化、複雑な形状化、屋根幅いっぱいに広がるタイプなど、さまざまな社名表示灯が登場しています。広告収入を得るために、縦長の形状で側面に広告を入れたタイプも存在します。

中には、覆面パトカーの反転式警光灯のように、スイッチ一つで格納できる社名表示灯（ちょうちん）を備えた個人タクシーもあります。

社名表示灯は、基本的に裏面の吸盤で屋根に固定します。個人タクシーや一部のハイヤー兼用車は脱着可能ですが、法人タクシーの場合は接着剤で固定する場合もあります。

光源は、一般的に白熱電球（12V 10W G18球 BA15s口金）を使用しますが、近年では、長寿命化、消費電力削減、視認性向上を目的として、LED光源を採用する事業者も増えています。LEDは、色付きでも光量が落ちにくいという利点があります。

形状は、アクリル樹脂で成型されたものが主流で、多くの場合は社名灯メーカーのカタログから選択します。そのため、異なる事業者同士でも同じ形状の社名灯を使用していることも珍しくありません。

全高の高い車種の場合、フロントガラス上部に設置するタイプの社名表示灯もあります。ただし、後方からの視認性が悪くなるため、後方用に小型の社名表示灯や防犯灯を別途設置する場合もあります。

ご当地タクシー

観光客が多い地域では、各地の名産品の模型と組み合わせた社名表示灯を取り付け、旅行者の利用増を図るタクシー会社があります。例えば、金沢市では寿司、長崎市ではカステラ、香川県琴平町ではうどんの丼をモチーフにしたものがあります。これらのタクシー会社は、2018年に「日本ご当地タクシー協会」を発足させました。

日本の主なメーカー

* 武内工業所


社名表示灯は、タクシーの象徴としてだけでなく、安全性やサービス向上にも貢献する重要な存在です。その進化は、タクシー業界の歴史を映し出す鏡と言えるでしょう。

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