社長放浪記

『社長放浪記』は、劇作家・三谷幸喜が脚本を書き下ろし、演出家・三宅裕司が演出を担当した舞台作品です。2007年6月25日から7月22日まで、下北沢本多劇場にて全27回（うち休演日7日）上演されました。この作品は、「伊東四朗生誕?!七十周年記念」と銘打たれており、伊東四朗の古希を祝う記念公演として制作されました。

概要

本作は、伊東四朗と親交の深い三谷幸喜が、森繁久彌の「社長シリーズ」にインスパイアされて執筆しました。三谷は、伊東の個性を最大限に引き出し、笑いを追求した脚本を作り上げました。演出の三宅裕司は、自身の劇団SET（スーパー・エキセントリック・シアター）のノウハウを生かし、テンポの良いコメディ劇として舞台を彩りました。

あらすじ

物語は、HATOPOPPO製菓の社長（伊東四朗）を専務（三宅裕司）が辞めさせようと企むところから始まります。社長は、会社に出入りするピーナツ売りの女性（藤澤恵麻）に密かに好意を抱いており、害虫駆除業者の男（伊東孝明）に協力を仰ぎ、身分を偽って彼女と会うことを楽しみにしています。そんな中、社長とそっくりの作業着姿の男を見た専務は、彼を社長のそっくりさんだと勘違いし、副社長（東貴博）を騙して社長を辞めさせる計画を立てます。

計画を知った社長は、正体を隠すため、そっくりさんと二人一役を演じることになります。さらに、社長の秘密を知ってしまった部長（山口良一）、左遷されたものまね好きの元常務（佐藤B作）、社長夫人（中村メイコ）、社長秘書（河本千明）らも巻き込み、騒動はどんどん大きくなっていきます。それぞれの思惑が交錯し、予測不能な展開が繰り広げられます。

キャストとスタッフ

作: 三谷幸喜
演出: 三宅裕司
* 出演: 伊東四朗、佐藤B作、三宅裕司、藤澤恵麻、山口良一、東貴博、伊東孝明、河本千明、中村メイコ

舞台裏のエピソード

本作は、伊東四朗が日本喜劇人協会の副会長を務めていた時代に、三谷幸喜（大賞）、三宅裕司・佐藤B作（特別賞）が喜劇人大賞を受賞したことがきっかけで、4人が「一緒に舞台をやってみよう」と意気投合したことが始まりです。

三宅と佐藤は、それぞれ劇団の座長を務めていますが、本作が初の共演となりました。三宅は佐藤の演技について「台本から外れても、すぐに戻ってくるセンスが素晴らしい」と語り、佐藤は三宅の印象を「もっと嫌な奴かと思っていたが、実は良い人だった」と述べています。

伊東と中村は、かつて「お笑いオンステージ」で共演して以来、30年ぶりの共演となりました。この時、伊東が古希を迎えたのに対し、中村は芸歴70年という記念すべきタイミングでした。伊東は、息子・孝明との共演を希望していましたが、三谷の提案で実現しました。また、東貴博は、父親である東八郎が伊東と親交が深かったことから、「今回出演できて幸せだ」と語っています。河本千明は、当時SET入団3年目でしたが、伊東とは以前から縁があり、数々の作品で共演していました。伊東は、自身のYouTube番組で、この作品を「今までで一番ウケた芝居」と回想しています。中村メイコの逝去後、伊東は「『社長放浪記』で最高の笑いを経験できた」と追悼コメントを述べています。

DVD

2007年7月11日の公演を収録したDVD『伊東四朗生誕?!七十周年記念「社長放浪記」』が発売されています。このDVDは、舞台の感動を再び味わうことができる貴重な記録です。

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