祈り (長渕剛の曲)

長渕剛「祈り」：失恋の悲しみを刻んだ不朽の名曲

1979年7月5日、シンガーソングライター長渕剛の3枚目のシングル「祈り」が、東芝EMIのエキスプレスレーベルからリリースされました。作詞・作曲は長渕剛自身、編曲は佐藤準が担当したこの曲は、若き日の長渕の切実な想いを反映した、忘れがたい名曲として知られています。

曲の背景：実体験に基づく悲恋物語

「祈り」は、長渕剛の個人的な体験に基づいて制作された楽曲です。当時、福岡で一人暮らしをしていた長渕は、交際していた女性と同棲していました。しかし、その関係は母親の反対にあい、別れを余儀なくされます。その後、上京して歌手デビューを果たした長渕でしたが、女性の存在を忘れられずにいました。再会を果たしたものの、ある日、女性が事故で亡くなったという知らせを受け、大きなショックを受けます。

この悲痛な経験が、「祈り」の創作の原動力となりました。女性が天に召されていく様子が歌われる歌詞は、長渕の深い悲しみと、失われた愛への切ない想いをストレートに表現しています。当時のディレクターは、若々しい長渕がこれほどまでに深いラブソングを書けたことに驚き、その実体験を知って納得したと語っています。

音楽性：儚くも力強いバラード

「祈り」は、亡くなった恋人への惜別の歌として、静かに、そして力強く聴く者の心に響きます。楽曲制作過程においては、間奏部分に異なるメロディーのパートが存在していましたが、最終的には削除されました。このオリジナルバージョンは、ライブアルバム『長渕剛LIVE』（1981年）に収録されており、初期のライブパフォーマンスを知る上で貴重な資料となっています。

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、「長渕の得意とする、儚さたっぷりの悲恋歌」と評され、その繊細さと力強さを併せ持つ音楽性が評価されています。ストリングスによる壮大なアレンジも楽曲の情感を深めており、聴く者の心に深く刻まれる名曲となっています。

リリースとその後：ベストアルバムへの収録と再録音

「祈り」は1979年7月5日にリリースされ、初期のライブでは演奏されていましたが、その後は長らくライブから姿を消しました。ベストアルバムへの収録も長らくありませんでしたが、『SONGS』（2008年）で再録音バージョンが収録されることとなり、再び多くの人々に聴かれる機会を得ることとなりました。この再録バージョンではボーカルのみが新たに録音されています。

一方、シングルB面曲の「恋のランデブー」は、タイトルから想像できるように「祈り」とは対照的な、軽快なラブソングです。こちらはアルバムには未収録となっています。

プロモーションとチャート成績

「祈り」のプロモーション活動の一環として、長渕剛は日本テレビ系音楽番組『コッキーポップ』に出演し、本曲を含む複数の楽曲を披露しました。

オリコンチャートでは最高位55位、登場回数16回という記録を残し、累計売上枚数は5.8万枚にのぼりました。

収録作品

「祈り」は、数々のアルバムに収録されています。

スタジオ音源

『逆流』（1979年）
『夏の恋人』（1981年）
『FROM T.N.』（1983年）
『SINGLES Vol.1 (1978〜1982)』（1997年）
『SONGS』（2008年） - 再録音バージョン

ライブ音源

『長渕剛LIVE』（1981年） - 1980年ツアーでの歌唱バージョンで、間奏に異なるメロディーと歌詞が追加されている。

批評

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、「愛が終わってしまった悲しみ、悔やんでも悔やみ切れない男の嘆きを、つぶさに表現することに成功している。寂しさの念を壮大に描く、ストリングスも聴きどころ」と高く評価されています。

長渕剛の代表曲の一つである「祈り」は、その切ないメロディーと、実体験に基づいた歌詞によって、多くの人々の心を掴み続けています。失恋の苦しみや、大切な人を失った悲しみを経験した人にとって、この曲は特別な共感を呼ぶでしょう。そして、音楽を通して、失われた愛への想いを静かに語りかける名曲として、これからも聴き継がれていくことでしょう。

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