祈る聖フランチェスコ (カラヴァッジョ)

『祈る聖フランチェスコ』（伊:San Francesco in meditazione, 英:Saint Francis in Prayer）は、イタリア・バロック絵画の巨匠カラヴァッジョによって1602年から1604年頃に制作されたとされる絵画です。現在はローマのバルベリーニ宮国立古典絵画館に所蔵されています。

この作品は、記録が残されていないため、制作年の特定が非常に困難です。さらに、オリジナル作品と後の複製を区別することさえ難しい状況です。バルベリーニ宮の所蔵作品は、元々カルピネート・ロマーノのサン・ピエトロ教会にありました。しかし、ローマの無原罪の聖母のカプチン会修道士教会にある同主題の作品と同様に、どちらがオリジナルなのかは判明していません。

聖フランチェスコの貧困と謙遜を重んじる生活は、カラヴァッジョの時代には非常に人気のあるテーマでした。美術史家のピーター・ロブは、アッシジの聖フランチェスコ、洗礼者ヨハネ、聖ヒエロニムスの3人を、カラヴァッジョが繰り返し描いた点に着目しました。彼は、この3人を「青年、壮年、老年の三人であり、陰気で人間社会から離れ、疎外された男性のトリオ」と表現し、カラヴァッジョ自身の内面を象徴していると指摘しています。

また、1603年の名誉毀損裁判において、カラヴァッジョの友人であるオラツィオ・ジェンティレスキが、数ヶ月前にカラヴァッジョに僧衣を貸したと証言しました。この絵画に描かれた僧衣が、その時に貸与されたものである可能性も指摘されています。この証言は、絵画の制作年を1602年から1604年頃とする有力な根拠の一つとなっています。しかし、ロブは、絵画の厳格な作風から、カラヴァッジョがローマを逃亡した1606年頃に描かれたと主張しています。これは、カラヴァッジョが街頭での喧嘩で殺人を犯し、ローマから逃亡した時期と重なります。彼の逃亡生活での精神状態が作品に影響を与えたという見方もできるでしょう。

この作品は、カラヴァッジョの宗教的な主題へのアプローチと、彼の内面的な苦悩を映し出すものとして、美術史において重要な位置を占めています。制作年の確定には至っていませんが、この作品が持つ芸術的価値と、カラヴァッジョの生涯を考察する上で貴重な資料であることは疑いようがありません。

参考文献
Gash, John (2003). Caravaggio. ISBN 1-904449-22-0
Hibbard, Howard (1983). Caravaggio. ISBN 0-06-433322-1
Langdon, Helen (1998). Caravaggio: A Life. ISBN 0-374-11894-9. https://archive.org/details/caravaggiolife00lang
Robb, Peter (1998). M. ISBN 0-312-27474-2
* Spike, John T. (2001). Caravaggio. ISBN 0-7892-0639-0

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