祝福

祝福とは

祝福とは、神が自らの恵み（恩寵）を授ける行為を指します。また、神への賛美や信仰の共有を前提として、神の恵みを他者に取りなす行為でもあります。この行為は、単なる親愛の情を示すだけでなく、祝福する側の信仰告白としての側面も持ち合わせています。重要な点として、祝福によってもたらされる恵みの授与者は神であり、人が自力で霊的な影響力を行使する呪術とは根本的に異なります。

祝福の恵みの源を神に帰すという行為は、聖別という概念にもつながります。そのため、教会で秘蹟や準秘蹟として行われる祝福行為は「祝別」とも呼ばれます。さらに、神に祝福を求め、取りなす行為は祈りにも通じます。祝福を求める祈りは「祝祷」と呼ばれ、行為者の謙遜さから「祝福」という言葉を避けて用いられることもありますが、その意味合いは実質的に祝福と同意です。

旧約聖書における祝福

旧約聖書で「祝福」と訳されるヘブライ語「בְּרָכָח /berakah/」は、「救済に満ちた力を付与する」という意味を मूल意 とします。この言葉は、贈り物や和解という意味も持ち、動詞「בָּרַךְ /barak/」としては「祝福する」以外にも、感謝するなどの意味を含みます。旧約聖書における祝福は、物質的な豊かさを中心に考えられていました。例えば、「子が生まれる」ということが、神からの祝福の代表的な例として捉えられていました。創世記1章28節では、神が人間を祝福し、「生めよ。ふえよ。地に満ちよ」と命じました。この祝福は、ノアとその子孫にも引き継がれ、ユダヤ人にとって子供の誕生は神の祝福の証とされました。

神はアブラハムに対し、子孫の繁栄、土地の継承、そして全人類の祝福の源となるという約束を与えました。この約束は、イサク、ヤコブ、ユダへと受け継がれ、最終的にはイエス・キリストの誕生によって成就しました。

旧約聖書では、人が自分自身を祝福することは禁じられていますが、祝福は人から与えられる側面も持ち合わせています。モーセは家族を祝福し、ダビデは民衆をたびたび祝福しました。また、祭司は神の名によって祝福する役割を担っていました。

祝福の反対概念は呪いです。神の命令に従う者は祝福されますが、従わない者は呪われるとされています。

新約聖書における祝福

新約聖書では、祝福と訳されるギリシャ語として、εὐλογία /eulogia/（賛美）、/agathos/（良い）、μακάριος /makarios/（幸いな）などがあります。新約聖書の思想では、アブラハムが受けた祝福はキリスト教徒に引き継がれ、「キリストと共同の相続人」となりました。

キリストは最後の晩餐でパンを祝福し、弟子たちの足を洗って、彼らも同じようにするなら祝福されると教えました。さらに、「あなたをのろう者を祝福しなさい」と、旧約聖書にはない新しい戒めを説きました。パウロも「迫害する者を祝福しなさい」と勧め、自らも「はずかしめられるときにも祝福した」と述べています。

聖書全体を通して「祝福」という言葉は260回以上登場します。

祝祷

祝祷は、祈りの形式の一つであり、礼拝用語としても用いられます。元々は個人的に特定の人物を祝福する場合にも使われていましたが、現代では礼拝後、教職者によって行われる要素を指すことが多いです。

代表的な祝祷には「アロンの祝祷」があります。礼拝で両手を上げて祝福する姿勢は、レビ記の記述に基づいています。一般的な祝祷文には、コリントの信徒への手紙二13章13節などがありますが、他にもヘブライ人への手紙13章20-21節、ローマの信徒への手紙15章13節、ユダの手紙24-25節などがあります。また、「平安がありますように」という短い文も用いられます。新約聖書の使徒的祝祷文は、三位一体の神を強調するのが特徴です。

脚注

参考文献

宇田進ほか『新キリスト教辞典』、いのちのことば社、1991年（ISBN 4-264-01258-9）
名尾耕作『旧約聖書ヘブル語大辞典』、聖文社、1982年（ISBN 978-4764240285）
日本キリスト教歴史大事典編集委員会『日本キリスト教歴史大事典』、教文館、1988年（ISBN 978-4-7642-4005-6）
『聖書 新共同訳』、日本聖書協会、1987年、（ISBN 978-4820211020）

関連項目

聖別
動物の祝福

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