神々の山嶺

神々の山嶺

『神々の山嶺』（かみがみのいただき）は、夢枕獏が1994年から1997年にかけて『小説すばる』で連載し、その後集英社から出版された小説です。この作品は、登山家の羽生丈二がエベレスト南西壁の冬期無酸素単独登頂に挑む姿を描いています。物語の中では、実際に登山界で存在する「ジョージ・マロリーはエベレストに登頂したのか」という謎が絡み合い、登場人物たちの運命を形成しています。違法行為や危険な挑戦が交錯する中、深町誠というカメラマンも重要な役割を担っています。

本作の概要

物語は、羽生丈二という一流の登山家が、冷酷に厳しいエベレストの冬季登攀に挑む様子を中心に描かれます。作中で深町は、エベレスト登山の真実を追求する過程で、羽生の過去を知り、彼に強く惹かれていく様子が描かれています。羽生は過去に事故で仲間を失い、その贖罪感から孤独な登山を続けていますが、同時に彼の心には深い葛藤があります。

受賞歴とメディア展開

この作品は、第11回平成10年度柴田錬三郎賞を受賞し、また漫画化や映画化といった多くのメディア展開も運命づけられました。漫画版は谷口ジローの作画により『ビジネスジャンプ』に連載され、文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞。映画化もされ、実写版が2016年に公開され、アニメーション映画版も2021年に公開されました。アニメ版はフランスで『Le Sommet des Dieux』のタイトルで配信され、世界中で評価を受けました。

あらすじ

物語は、エベレスト登山隊が悲劇に見舞われる場面から始まります。45歳以上のメンバーで構成された登山隊では2名が滑落して命を落とし、残された隊員である深町はカトマンズの街をさまよう中、古道具屋でジョージ・マロリーが使ったと思われるカメラを見つけます。深町はこのカメラを手に入れますが、すぐに盗まれてしまいます。

カメラを追ううちに、深町はかつての名登山家である羽生丈二と出会います。羽生は過去の事故の影響で人々から避けられ、孤独な旅を続けていました。深町は羽生に感化され、彼の足跡を追う旅に出る決意をします。物語は、羽生の過去と深町の成長、そしてエベレストへの挑戦を通じて描かれる人間ドラマに満ちています。

登場人物

• - 羽生丈二: 天賦の才能を持つクライマーであり、登山への情熱から孤立を深める。
• - 深町誠: 物語の語り手でカメラマン、羽生の人生に触れながら自己を見つめ直す。
• - アン・ツェリン: 経験豊富なシェルパで、羽生を長年支え続けてきた人物。
• - 岸文太郎: 羽生のザイルパートナーだった若者で、羽生の登山人生に影響を与える存在。彼の死が羽生を深く孤独に追いやることになる。

結論

『神々の山嶺』は、登山の厳しさや成功の裏に潜む人間の葛藤を描いた深い作品です。羽生丈二の孤高の挑戦と、深町誠の成長過程が見事に織り交ぜられており、多くの読者に感動を与えています。登山界の謎と登山者の心の軌跡を追い、新たな気持ちを抱かせてくれる作品だと言えるでしょう。

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