神々の饗宴

『神々の饗宴』（かみがみのきょうえん、伊: Festino degli dei）は、イタリアの巨匠ジョヴァンニ・ベッリーニが1514年に制作を開始し、後にティツィアーノ・ヴェチェッリオが1529年に加筆を施した絵画作品です。別名『神々の祝祭』とも呼ばれます。

この作品は、ベッリーニの晩年の作品であり、彼の弟子であったジョルジョーネの作風から影響を受けている点が指摘されています。現在は、ワシントンにあるナショナル・ギャラリーに所蔵されており、その精緻な描写と、古代神話を題材とした豊かな表現で、多くの鑑賞者を魅了し続けています。

作品に描かれているのは、古代ギリシャの神々が集い、宴を催している場面です。画面左端には、半人半獣の姿をしたサテュロスが描かれています。サテュロスは、その性格から淫欲や悪徳を象徴する存在として表現されています。サテュロスの隣には、赤い衣服をまとった男性、シレノスが描かれています。シレノスは、ロバを連れていることから、怠惰を象徴する存在として描かれています。

さらに、画面中央には、酒樽からワインをグラスに注いでいるバッコス（バッカス）の姿があります。バッコスは、頭にブドウの葉の冠をつけ、ワイングラスを持っていることから、酒の神として描かれ、豊穣の象徴とされています。その近くには、白い服をまとって座るメルクリウス（マーキュリー）が描かれています。メルクリウスは、杖とヘルメットを身につけており、商人や旅人の守護神として、また理性と雄弁の象徴として描かれています。

そして、画面右側には、緑の服と赤いマントを身につけて座るネプトゥーヌス（ネプチューン）が描かれています。ネプトゥーヌスは、足元に三つ叉の鉾を置いていることから、海の神であり、水の象徴として表現されています。

これらの神々は、それぞれが持つ象徴的な意味合いと共に、この絵画の中で見事に共存しています。ベッリーニとティツィアーノという二人の巨匠の手によって生み出されたこの作品は、古代神話の世界を、生き生きと現代に蘇らせることに成功しています。

作品に描かれている各神々の詳細は以下の通りです。

サテュロス: 半人半獣の姿で、淫欲や悪徳を象徴。
シレノス: ロバを連れており、怠惰を象徴。
バッコス: ブドウの葉の冠とワイングラスを持ち、酒と豊穣の神を象徴。
メルクリウス: 杖とヘルメットを持ち、理性と雄弁の神を象徴。
ネプトゥーヌス: 三つ叉の鉾を持ち、海の神、水を象徴。

参考文献

中村麗『これだけは知っておきたい「名画の常識」』小学館〈小学館101ビジュアル新書 Art〉、2012年。ISBN 978-4-09-823019-8。

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