神代錦

神代 錦（かみよ にしき）

神代錦は、1917年3月18日に鳥取県倉吉市で生まれ、本名は稲垣静子という宝塚歌劇団の元男役・理事である。彼女は1929年に宝塚歌劇団に入団し、19期生としてデビューを果たした。初舞台となる「春の踊り」でその才能を示し、以降、短い間に多くの舞台で活躍した。

彼女の芸名は、小倉百人一首の第24番である菅原道真に由来し、戦時中には軍の要請により、芸名の表記を「嘉美代 錦」としていたこともある。最初はダンサーとして注目を浴び、洋舞と日本舞踊の名手としても評価を得た。特に、名取名藤間松左を持つ彼女は、洋舞と日本舞踊の両方に精通していた。

1943年には花組の組長に就任し、1948年からは復活した星組の組長を務め、1951年までその役割を全うした。その後、演劇専科に異動し、春日野八千代らと共に主演級の役を多く演じるようになり、舞台を盛り上げていく。彼女の演技は常に観客に新たな感動を与えた。

1961年には、宝塚義太夫歌舞伎研究会の公演「加賀見山旧錦絵」において岩藤を演じ、第16回芸術祭奨励賞を受賞するなど、その才能は舞台の域を超えて評価されるようになった。1973年には宝塚歌劇団の理事に就任し、行動力をもって歌劇団の発展にも寄与した。また、1980年代半ばにかけて、再び舞台に立ち続け、多くの作品で観客を魅了した。

1989年2月23日、彼女は満72歳の誕生日を目前にして他界した。彼女の死後、2014年には『宝塚歌劇の殿堂』に最初の100人の一人として永久に名を刻まれることとなる。神代錦は彼女の舞台人生を通じて多くの人々の心に残り、今日の宝塚歌劇団にも大きな影響を与えている。

主な舞台出演

神代錦が出演した舞台は多岐にわたる。特に宝塚歌劇団の作品では、『トウレシック』や『ロザリータ』、『花ある氷河』など、多数の人気公演に名を連ねている。彼女の演技力と存在感は、舞台の中心的な役割を果たし、多くの観客の記憶に刻まれた。また、外部出演としても『お市の方』や『千姫曼陀羅』など、数々の作品でその魅力を発揮している。

神代錦の姿勢、努力、そして情熱は、宝塚歌劇団を基盤にした舞台芸術界の発展に大きく貢献した。また、彼女の名は、宝塚における男役の理想像として今もなお語り継がれている。

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