神使

神使：神の使い、そして信仰の対象

神道において、神使（しんし）とは神の意志を伝え、現世と神界を繋ぐ役割を担うと信じられてきた動物です。「神の使い」「つかわしめ」「御先（みさき）」などとも呼ばれ、時には神そのものと見なされる場合もあります。その対象となる動物は多様で、哺乳類、鳥類、爬虫類、さらには想像上の生き物まで幅広く存在します。

神使に関する記述は、古くから日本神話や歴史書に見られます。『日本書紀』には、景行天皇が伊吹山の荒神が化けた大蛇を「荒神の使い」と認識した話が記されています。また、皇極天皇記には、猿の鳴き声を伊勢大神の使いとして吉凶を占った記述があり、崇神天皇記では大物主神が蛇の姿で現れる場面が登場します。これらの記述は、古代において特定の動物が神聖な存在と結びついていたことを示しています。

平安中期に成立した『扶桑略記』には、伊勢神宮周辺で白狐を射殺した者が流罪になったという記述があり、古代における霊狐信仰の存在を示唆しています。時代が下るにつれ、神使とされる動物は特定の神話や神社の縁起に基づいて固定化され、神社で飼育されることもありました。さらに、稲荷神社の狐のように、神使が信仰の対象として祀られるケースも生まれました。これは、神との関連性とは別に、動物自体に霊的な力があると信じられていたためだと考えられます。

神使とされる動物は実に多様です。例えば、特定の神社では特定の動物が神使として崇められてきました。その動物は、神社の創建神話や歴史に深く関わっていることが多く、神使としての役割は、神社の信仰に不可欠な要素となっています。

こうした神使への信仰は、時代とともに変化を遂げてきました。古代では、神使は神の直接的な使いとして、神意を伝える存在でした。しかし、時代が下るにつれて、神使は単なる神の使いを超え、それ自体が信仰の対象となるようになりました。例えば、稲荷神社の狐は、単なる神使ではなく、福徳をもたらす神として信仰されています。

神使に関する信仰は、現代においても各地の神社で受け継がれ、人々の生活に深く根付いています。神使の動物たちは、神道信仰において重要な役割を担い、人々と神を繋ぐ象徴的な存在であり続けています。

神使とされる動物の例:

神使とされる動物は多岐に渡り、地域や神社によって異なります。いくつかの例を挙げると、狐（稲荷神）、猿（山王神）、蛇（様々な神々）、鹿（春日大社など）、鳩（様々な神々）などが挙げられます。これらの動物は、それぞれの神々との関連性から、神使として崇められてきました。

ことわざにも残る信仰:

「猿は山王の使者」ということわざは、神使信仰が広く人々の間に浸透していたことを示す一例です。山王（さんのう）は日吉神社の別称であり、このことわざは、日吉神社の神使である猿に対する信仰が、一般的に知られていたことを物語っています。

神使は、神道信仰の重要な要素であり、日本の文化や歴史に深く関わる存在です。神使に関する研究は、日本の宗教観やアニミズム的な世界観を理解する上で、重要な役割を担っています。今後も、神使に関する研究が進むことで、日本の文化や歴史への理解が深まることが期待されます。

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