神吉晴夫

神吉晴夫

神吉晴夫（かんき はるお）は、1901年2月15日に兵庫県加古川市で生まれ、1977年1月24日に生涯を閉じた、日本の編集者であり、出版事業家です。彼は、光文社の二代目社長、カッパ・ブックスの創始者、そして、かんき出版の創業者として知られ、「戦後最大の出版プロデューサー」とも呼ばれています。

生涯

神吉晴夫は、1922年に東京外国語学校仏語部貿易科を卒業後、1927年に東京帝国大学文学部仏文科を中退し、講談社に入社しました。彼は自ら8か国語に堪能であると豪語し、講談社の社長であった野間清治から破格の給与で迎えられました。講談社傘下のキングレコード時代には、童謡プロデューサーとして「かもめの水兵さん」、「赤い帽子白い帽子」、「ふたァつ、ふたァつ、何でしょね」など、数々のヒット曲を生み出しました。

1945年10月には光文社の創立に参加し、編集局長に就任。1965年から1970年までは社長を務めました。1970年から1976年まではサンケイ新聞出版局の顧問を務め、1977年には自身が創業したかんき出版を設立しました。また、1955年には日本ジャーナリスト会議の副議長にも就任しています。

神吉晴夫は、著者の原稿をそのまま出版することが当たり前だった時代に、著者と出版社が共同で本を作るという新しいスタイルを確立しました。彼の出版プロデュースにより、南博の『社会心理学 社会行動の基礎理論』（1949年）、波多野勤子の『少年期』（1950年）などがベストセラーとなりました。

光文社の常務であった1954年には、伊藤整の『文学入門』と中村武志の『サラリーマン目白三平』を皮切りに、軽装新書版による書き下ろしの「カッパ・ブックス」シリーズを創始。その後、「カッパ・ノベルズ」、「カッパ・ビジネス」など、数々のシリーズを世に送り出しました。

初代社長である茂木茂の死後、光文社の第2代社長に就任。彼は、『女性自身』の部数を147万部にまで伸ばしました。1960年代後半には、光文社から女性自身社を独立させる構想も持ち上がりましたが、1970年の安保闘争の影響による労働組合からの批判を受け、役員と共に社長を辞任することになりました。その後、かんき出版を創業しましたが、まもなく死去しました。彼の墓は、八柱霊園にあります。

著書

『三光 日本人の中国における戦争犯罪の告白』編　光文社カッパ・ブックス　1957
『台風の子 伊勢湾周辺の記録』編　光文社カッパ・ブックス　1960
『現場に不満の火を燃やせ ビジネスマン入門』オリオン社　1963
『俺は現役だ カッパ大将発言集』オリオン社　1964
『俺は現役だ』土曜社　2020
『カッパ兵法 人間は一回しか生きない』華書房・ハナ・ブックス　1966
『編集者、それはペンを持たない作家である』実業之日本社　2022
『カッパ軍団をひきいて 魅力を売りつづけた男たちのドラマ』学陽書房　1976

参考資料

鈴木徹造『出版人物事典』出版ニュース社、1996

関連人物

岩瀬順三

著名人が眠る八柱霊園

* 八柱霊園に眠る著名人

神吉晴夫は、その革新的な出版活動によって、戦後の出版界に大きな影響を与えた人物として、今もなお語り継がれています。

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