神威岳 (札幌市)

神威岳：札幌の険しい峰

札幌市南区にそびえ立つ神威岳（かむいだけ）は、標高983メートルの山で、北海道百名山に名を連ねる雄峰です。その険しい峰は、古くから人々の興味を惹きつけ、様々な伝説や語源を生み出してきました。

山名の謎：複数の説が交錯する

神威岳という名前の由来については、複数の説が存在し、いまだに結論が出ていません。有力な説としては、アイヌ語の「カムイ・ヌプリ（神の山）」に由来するというものがあります。これは、神聖な山としてアイヌの人々が崇めていたことを示唆しています。

一方、「キムン・カムイ（山の神）」すなわちヒグマを指すという説や、アイヌ語の本来の名前は「プーネシリ」であり、「神威」という名称は明治時代の陸地測量部による命名であるとする説もあります。さらに、アイヌ語で「エペシ（頭が岩崖）」だったものが転訛し、「エボシ」を経て、隣の烏帽子岳に名称が移ったとする説も存在します。これらの説が混在する背景には、アイヌ文化と近代日本の歴史が複雑に絡み合っていることがうかがえます。

別名として「モンパー」と呼ばれることもあります。これは、「切り立った山」を意味するアイヌ語「モン・パーペンディキュラ」の短縮形だと考えられています。この名称からも、神威岳の険しい地形が想像できます。

独特の地形：岩肌むき出しの山頂

神威岳の最大の特徴は、その異様な山頂です。岩がむき出しになった頂上は、まるで鋭く突き出した刃物のような、独特の凸字型をしています。この険しい地形は、多くの登山家を魅了すると同時に、挑戦意欲をかき立てる要素となっています。

烏帽子岳との関係：縦走の難所

神威岳は、烏帽子岳と尾根続きで、両峰を繋ぐ縦走も可能です。しかし、そのルートは容易ではなく、経験豊富な登山家以外にはお勧めできません。両峰間の距離は約1キロメートルですが、険しい岩場や急斜面が多く、高度な技術と体力が必要になります。

登山道の変遷：沢登りの歴史とダム建設の影響

神威岳への登山道は、南を流れる豊平川に架かる百松橋から始まります。かつては、西側の木挽沢コースが人気で、手ごろな沢登りが楽しめました。しかし、定山渓ダムの建設によって、沢の下流部分が水没し、往時の魅力は失われました。この変化は、自然と人間の関わり方、そして登山環境の変化を象徴する出来事と言えるでしょう。

参考文献

神威岳に関する情報は、以下の文献から得ることができます。

『札幌地名考』さっぽろ文庫1
『札幌の山々』さっぽろ文庫48
鮫島惇一郎『回想の風景・札幌 -遥かな日々の記憶-』富士コンテム、2007年6月10日
梅沢俊、菅原靖彦『北海道夏山ガイド』（最新第4版）北海道新聞社、2015年9月10日

これらの文献には、神威岳の歴史、地形、登山ルート、そして周辺地域の自然環境に関する詳細な記述が掲載されています。神威岳登山を計画する際には、これらの文献を参照することをお勧めします。

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