神岡鉄道

神岡鉄道株式会社：山奥の地下鉄から消えたローカル線

神岡鉄道株式会社は、岐阜県飛騨市に本社を置く第三セクター方式の鉄道会社として、かつて存在していました。旧国鉄神岡線の引き継ぎを契機に、旅客輸送と神岡鉱山からの硫酸輸送を主な事業としていましたが、時代の流れとともに経営は次第に悪化していきました。

神岡線の開業は1966年10月6日。山岳地帯を縫うように建設された路線は、トンネルが全体の約6割を占め、「山奥の地下鉄」と称されました。当初は、観光客や通勤・通学の利用者で賑わいましたが、バスや自家用車の普及により利用客は減少の一途を辿り、2004年度には1日平均利用者数が100人を下回るまでになりました。

経営を支えていた神岡鉱山からの硫酸輸送は、2004年10月に貨物自動車への転換が決定。これにより、神岡鉄道の収入の7割以上を占めていた貨物輸送は同年12月31日をもって休止、経営はさらに深刻な状況に陥りました。

2005年6月29日、神岡鉄道の取締役会は神岡線の廃止を決定。同年11月には国土交通省に鉄道事業廃止届が提出され、2006年12月1日をもって神岡線は廃止されました。廃止までの間には、飛騨市への経営移譲や、観光鉄道への転換といった試みもありましたが、実現には至りませんでした。特に、観光鉄道化に関しては、2008年の飛騨市長選挙で反対派が勝利したことで、その可能性は絶たれました。

神岡線の廃止によって、定期利用客は富山市の高校に通う高校生1人だけとなり、バス路線への転換も行われませんでした。2007年1月16日にテレビ東京で放送された『日経スペシャル ガイアの夜明け』では、神岡鉄道の最後の定期利用客や、地方鉄道の厳しい現実が取り上げられました。

神岡鉄道の車両は、旅客車両がKM-100形とKM-150形の2両のみという少なさでした。貨物輸送には、国鉄から譲渡されたDD13形や、JR四国から譲渡されたDE10形などのディーゼル機関車が使用されていました。また、除雪用モーターカーのDB1形は、廃線前に樽見鉄道へ譲渡されました。

神岡鉄道の軌跡は、過疎化やモータリゼーションの進展、地方鉄道を取り巻く厳しい現実を象徴する事例と言えるでしょう。神岡鉱山という特定の産業への依存、そして利用者減少という避けられない問題に直面し、最終的には廃線という結末を迎えることになったのです。 その歴史は、日本の地方鉄道の抱える課題を浮き彫りにし、現代社会における公共交通のあり方を問いかけるものです。

歴史

1984年1月20日：会社設立
1984年10月1日：神岡線移管
1998年1月16日：コンテナ輸送開始
2002年12月16日：奥飛騨温泉口駅改築工事終了、本社移転
2004年8月31日：コンテナ輸送終了
2004年10月15日：濃硫酸輸送終了
2005年1月1日：貨物営業休止
2005年3月31日：貨物営業廃止
2005年11月15日：中部運輸局に鉄道事業廃止届出
2006年12月1日：神岡線廃止
2007年6月30日：会社解散

路線

神岡線：猪谷駅 - 奥飛騨温泉口駅（19.9km）

車両

神岡鉄道は、旅客車両はわずか2両、貨物輸送用のディーゼル機関車なども保有していました。これらの車両は、国鉄や他社からの譲渡車が多かったことが特徴です。

テレビ番組

日経スペシャル ガイアの夜明け 「住民の足を守れ～消えゆくローカル線 再生への闘い～」（2007年1月16日、テレビ東京）

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