神戸市電尻池線

神戸市電尻池線：長田区を走った路面電車の軌跡

神戸市電尻池線は、かつて神戸市長田区を縦断していた路面電車路線です。長田停留場から築島停留場までを結び、地域住民の生活に深く根付いていました。本路線は、主要な幹線道路である国道2号、国道28号、そして県道489号などを走行するという特徴を持っていました。

開業から全線開通まで

尻池線の歴史は1922年（大正11年）7月12日に始まりました。長田停留場から菅原通5丁目停留場間が開業し、その後、段階的に路線が延伸されていきます。1923年（大正12年）には、菅原通5丁目から東尻池2丁目、そして松原通1丁目へと路線が伸び、翌1924年（大正13年）7月20日には、ついに松原通1丁目から築島停留場間が開通。全線2.992kmの路線が完成しました。

路線と停留所の変遷

尻池線は、その運行期間中に幾度か停留所の改称や廃止を経験しています。1961年（昭和36年）以前には、松原通1丁目、松原通3丁目、松原通5丁目、そして菅原通5丁目停留場などの名称変更が行われました。また、松原1丁目停留場は廃止されています。これらの変更は、地域開発や人口変動などを反映したものと考えられます。

特に注目すべき点は、山陽電気鉄道本線との平面交差です。長田停留場付近で平面交差していた両路線は、山陽電鉄が神戸高速鉄道への乗り入れを機に地下化される1968年（昭和43年）4月6日まで、この状態が維持されていました。この平面交差は、当時の交通状況を物語る重要な要素の一つと言えるでしょう。

廃止

尻池線の廃止は段階的に行われました。1969年（昭和44年）3月23日には中之島停留場から東尻池2丁目停留場間が廃止され、1970年（昭和45年）3月15日には長田停留場から東尻池2丁目停留場間が廃止。そして、1971年（昭和46年）3月14日には、残りの築島停留場から中之島停留場間が廃止され、尻池線は完全に歴史の幕を閉じました。

資料

尻池線の歴史を紐解く上で、いくつかの資料が貴重な情報源となります。例えば、『鉄道廃線跡一覧表（兵庫県内） - 神戸・兵庫の郷土史』や『神戸市電尻池線 路線図 - 鉄道歴史地図』、『昭和37年7月現在の電車運転系統図』、『昭和41年3月頃の路線図』などは、当時の様子を知る上で大変役立ちます。これらの資料から、尻池線が地域社会に貢献した歴史を改めて知ることができ、その存在の大きさを実感できるでしょう。

まとめ

神戸市電尻池線は、昭和初期から昭和40年代にかけて、神戸市長田区の交通を支えてきました。国道や県道などを走行し、山陽電鉄との平面交差という特徴的な存在でした。停留所の改称や廃止、そして最終的な路線廃止を経て、その歴史に幕を閉じましたが、地域住民の記憶の中に、そして貴重な資料の中に、その存在はしっかりと刻まれています。

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