神戸市電栄町本線

神戸市電栄町本線：神戸の街を駆け抜けた路面電車の歴史

神戸市電栄町本線は、神戸市中心部を縦断する主要な路面電車路線でした。1910年の開業から1971年の廃止まで、約60年間にわたり、多くの市民の生活を支え、神戸の街の発展に貢献しました。本稿では、栄町本線の歴史、数々の困難を乗り越えた軌跡、そして最終的な廃止に至るまでの経緯を詳細に解説します。

開業と初期の栄町本線

栄町本線の歴史は、1895年に神戸電気鉄道株式会社と兵神電気鉄道株式会社が市街電車敷設許可を申請したことに始まります。その後、幾多の議論を経て、1906年に神戸電気鉄道が路線免許を取得。1910年4月5日、春日野停留場から兵庫駅前停留場までの5.8キロメートル区間が開業しました。開業当初は春日野、南本町1丁目、南本町4丁目など19の停留場がありました。

神戸市電への移行と路線網の拡大

1913年には神戸電気鉄道と神戸電燈が合併し、神戸電気となりました。そして、1917年には神戸市が神戸電気を買収し、栄町本線は神戸市電の路線となりました。この際に、瀧道停留場から春日野停留場の間は磯上線として分離されました。1922年には湊川線の開通に伴い、新開地停留場に栄町本線と湊川線の分岐点が設置され、神戸市電初の信号保安装置が設置されました。

国鉄高架化工事と阪神大水害

当時、国鉄東海道本線や山陽本線は地上を走行していたため、栄町本線には国鉄線を跨ぐ跨線橋がいくつか存在しました。1931年には国鉄の高架化工事が行われ、栄町本線も地上線への切替えが行われました。1938年には阪神大水害が発生し、栄町本線も甚大な被害を受けました。しかし、関係者や市民の懸命な復旧作業により、約2ヶ月後には全線運転が再開されました。

戦災と復興

1945年には神戸大空襲が発生し、栄町本線も大きな被害を受けました。空襲による被害は甚大で、全線が運転不能に陥ったものの、懸命な復旧作業により、4月3日には一部区間、1946年には全線が運転を再開しました。

廃止への道

戦後、栄町本線は、1960年には三宮神社前停留場付近の軌道移設工事、1965年には神戸高速鉄道の建設に伴う仮線運行など、変化を続けながら運行を続けました。しかし、モータリゼーションの進展による自動車の増加や、神戸高速鉄道の開通による減収など、様々な要因が重なり、1968年には一部区間が廃止。そして、1971年3月14日、残りの区間も廃止され、栄町本線の歴史に幕を閉じました。

栄町本線の足跡

栄町本線は、神戸の街の発展とともに歩み、市民の生活に深く根付いた路面電車でした。阪神大水害や神戸大空襲といった困難な状況を乗り越えながらも、運行を続け、多くの人の記憶に刻まれています。その歴史は、神戸の歴史の一部として、これからも語り継がれていくでしょう。

参考文献

神戸市交通局編 (1971). さよなら神戸市電　写真でつづる54年の生涯. 神戸市交通局.
神戸新聞社編 (2009). 神戸市電物語　復刻版. 神戸新聞総合出版センター.
神戸市交通局編, 神戸交通振興協力 (2020). 神戸市交通局100年史 (PDF). 神戸市交通局.
鉄道廃線跡一覧表（兵庫県内） - 神戸・兵庫の郷土史
昭和37年7月現在の電車運転系統図
昭和41年3月頃の路線図

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