阪神大水害

阪神大水害の概要

阪神大水害は、1938年7月3日から7月5日にかけて、神戸市及び阪神地区で発生した大規模な水害です。この水害は、谷崎潤一郎の小説「細雪」に描かれており、場合によっては「細雪水害」と呼ばれることもあります。本地域の水害は、後に阪神淡路大震災（1995年1月17日）と共に語られることが多く、日本の自然災害の中でも特に大きな位置を占めています。

概説

1938年6月の終わりに太平洋岸に現れた梅雨前線が、7月3日に瀬戸内海を越え、数日間にわたって激しい雨をもたらしました。特に、7月5日午前1時から午後1時23分にかけての降雨は特に激烈で、日本全体で記録的な降水量が観測され、六甲山では616mm、神戸市内でも461.8mmに達しました。阪神間全体の多くの地域で、降水量が400mmを超えるという異常気象が見られました。

六甲山南麓には、急峻な地形から急激に海へと流れ込む川が多く、各河川流域での決壊や浸水などの土砂災害が次々と発生しました。この影響により、交通や通信も寸断され、都市機能はほぼ麻痺状態に陥りました。

被害状況

この豪雨によって、六甲山の多くの場所で山崩れが発生し、土石流とともに大規模な氾濫が引き起こされました。最も被害が大きかったのは六甲山の南側に位置する神戸市でしたが、東部や北部でも死傷者が報告されています。特に、被害が凄まじかったのは住吉川で、流れ込んだ土砂の量は154万立方メートルにも達しました。神戸市全体の人口の72%、家屋の72%が影響を受けました。

青谷川や布引川、宇治川などで次々と氾濫が起こり、中心部にあたる神戸駅付近は水で溢れ、交差点では濁流が肩まで達する状況になりました。豪雨の影響で、東海道本線も破損し、流れ込んだ残骸に埋まってしまった列車が多数存在しました。また、神戸港を維持するための施設も決壊し、直下の区域に濁流が押し寄せたことで、三ノ宮駅や栄町周辺の浸水が甚大なものとなりました。

この水害は、普通の家屋から名士の邸宅にまで多大な被害をもたらし、特に市民の避難が間に合わず、甲南小学校では土砂に埋まった児童が6名行方不明になるという痛ましい事例もありました。

背景と要因

六甲山の地質は非常に脆く、大雨によって地滑りが頻繁に発生しました。特に、江戸時代から続く経済活動により、森林が伐採され、山ははげ山になっていました。この状況が土砂崩れの原因となり、土石流が引き起こされる要因になりました。さらに、治水政策の遅れも影響し、災害後には国主導の治水・砂防事業が開始され、この事業は後の水害を防ぐための基盤となりました。

また、同年には全国各地で異常気象が見られており、関東地方でも同様の水害が発生しました。その後もこの地域は1961年や1967年にも大規模な水害に見舞われ、多くの死者を出しています。

関連作品

阪神大水害については、さまざまな文学作品や記録が残されています。谷崎潤一郎の「細雪」や手塚治虫の「アドルフに告ぐ」、妹尾河童の「少年H」などが知られています。また、当時の資料としては「阪神大水害調査報告」などが重要な文献となっています。

この災害は日本の歴史において決して忘れてはいけない出来事であり、今後の防災対策の教訓として生かされるべきです。

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