神戸捨二

神戸 捨二

神戸 捨二（かんべ すてじ）は、1901年（明治34年）12月6日に京都府京都市で生を受けた日本の実業家です。彼は大正から昭和にかけての激動期を生き抜き、特に電気通信分野の大手企業である沖電気工業において、その経営の要職を長年にわたり務め、同社の発展に多大な貢献をしました。

神戸は、旧制第六高等学校を経て、当時の日本の最高学府であった東京帝国大学へと進学しました。同学部の法学部独法学科で専門知識を修め、1925年（大正14年）に卒業。高度な教育を受けた後、彼は金融界に進み、同年には安田銀行に入行しました。安田銀行は当時、安田財閥の中核をなす重要な金融機関であり、ここで彼は実業界の基礎となる金融や経済に関する実務経験を積みました。その後、安田財閥の持株会社であった安田保善社、そして製造業である帝国ピストンリングでの勤務を経て、多様な産業分野における知見と経営感覚を培っていきました。これらの初期キャリアで得た幅広い経験が、後の電気通信産業における経営者としての活躍に繋がったと考えられます。

神戸捨二のキャリアにおいて最も重要な舞台となったのは、沖電気工業での経営活動です。第二次世界大戦が終結する直前の1945年（昭和20年）に、彼は沖電気工業に転じ、常務取締役に就任しました。戦後の混乱期という困難な状況下で、彼は経営の一員として会社の立て直しと再建に向けた取り組みを推進しました。その卓越した経営手腕はすぐに認められ、就任からわずか2年後の1947年（昭和22年）には専務取締役へと昇進しました。そして、1949年（昭和24年）には、代表取締役社長という組織の最高責任者の地位に就任しました。社長として彼は、戦後復興期から日本の高度経済成長期にかけての沖電気工業を牽引しました。この期間は、日本の電信・電話網の整備が進み、エレクトロニクス技術が急速に発展した時代であり、彼はこうした産業構造の変化に対応しながら、会社の技術開発や事業拡大を主導したと考えられます。彼は1966年（昭和41年）まで約17年間にわたり社長を務め、その後の1966年から1972年（昭和47年）までの約6年間は取締役会長として、引き続き経営の根幹に関与しました。神戸が沖電気工業で経営の重責を担った約27年間は、同社が戦後の困難を乗り越え、現代に繋がる企業基盤を確立する上で、極めて重要な時代でした。

長年にわたる企業経営における顕著な功績と、日本の産業界への貢献に対し、神戸捨二はその労をねぎらわれ、国からの栄典を授与されました。1962年（昭和37年）には、公共の利益に貢献した人物に贈られる藍綬褒章を受章しました。さらに、晩年期の1972年（昭和47年）5月には、長年の公務や公共的な活動における功労が認められ、勲二等瑞宝章を受章し、その多年にわたる貢献が広く称えられました。

神戸捨二は、1975年（昭和50年）6月1日、心不全のため、73歳でその波乱に満ちた生涯を閉じました。京都に生まれ、厳しい学問の道を究め、金融と製造業という異なる分野での経験を積み、そして一企業の最高経営者として戦後日本の高度成長期を駆け抜けた彼のキャリアは、まさに昭和という時代を象徴する経営者の一例と言えるでしょう。彼が沖電気工業に残した経営の軌跡は、現代の同社にも引き継がれ、日本の情報通信技術の発展に貢献し続けています。

[参考文献]

* 人事興信所 編『人事興信録 第28版 上』人事興信所、1975年。

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