神戸映画資料館

神戸映画資料館（こうべえいがしりょうかん）は、兵庫県神戸市長田区にあるフィルム・アーカイヴです。神戸市長田区腕塚町のアスタくにづか内に位置し、映画のフィルムやそれに付随する様々な資料の収集、保存、公開を行っています。民間の運営によるフィルム・アーカイヴとしては、日本国内で最大規模の所蔵数を誇る施設の一つです。

資料館の歴史は、個人的な映画フィルム収集を長年行っていた安井喜雄氏が、1974年に仲間たちと大阪府に開設した「プラネット映画資料図書館」を前身としています。その後、神戸市の協力を得て、プラネット映画資料図書館の貴重なフィルムや関連資料を引き継ぐ形で、2007年3月25日に神戸映画資料館として開館しました。

設立当初は「新長田まちづくり株式会社」が事業主体となり、「神戸プラネット」（代表は安井喜雄氏）が運営を受託する形態でした。しかし、2009年4月からは神戸プラネットによる独立採算事業として運営されることになります。さらに、2019年11月には、安井喜雄氏が理事長を務めるNPO法人「プラネット映画保存ネットワーク」が設立され、この法人が現在に至るまで資料館の運営を引き継いでいます。

神戸映画資料館の主な活動の一つは、映画フィルムの収集と保存です。2022年の時点では、20,000本以上の映画フィルムを所蔵しており、その規模は民営としては国内屈指です。単に現存するフィルムを保管するだけでなく、歴史の中で失われてしまったと考えられている映画の発掘にも積極的に取り組んでいます。フィルム以外にも、映画製作に使用された機材、映画に関連する書籍、チラシ、ポスターといった多岐にわたる資料を収集・保存しています。これらの収集品の一部は、資料館内の展示スペースで一般に公開されています。特に貴重なコレクションとして、戦前の映画館で実際に配布されていたプログラム約4,000点を所蔵しており、当時の映画文化を知る上で極めて重要な資料となっています。

資料館には、38席を備えたミニシアターが併設されています。ここでは、主に週末に様々な種類の映画が上映されています。上映作品は、初期の古典的な映画や無声映画から、ミニシアターでさえ上映機会が少ないような先鋭的な現代映画まで、幅広いジャンルにわたります。独自の視点でプログラムを組むことで、一般的な映画館では見られないような作品に出会える場となっています。このミニシアターは、映画上映の他にも、映画に関連するトークイベントや講演会などの会場としても利用されており、映画ファンや研究者が集まる交流の拠点となっています。

また、館内には収集された資料を閲覧できる資料閲覧室や、来館者が一息つけるカフェスペースも備えられています。これにより、来館者は映画資料を深く調べたり、上映の合間に休憩したりと、快適に資料館を利用することができます。

近年では、外部からの支援を受けて特定の事業も行っています。例えば、2023年度には文化庁のメディア芸術アーカイブ推進支援事業の助成を得て、「神戸映画資料館所蔵アニメーションフィルムのデジタルアーカイブ事業」を実施しました。これは、資料館が所蔵する貴重なアニメーションフィルムをデジタル化し、より永続的な形で保存・活用するための取り組みです。

前身であるプラネット映画資料図書館が活動を開始してから、2024年で50周年という節目を迎えました。これを記念し、これまでの活動の歴史を振り返る記念誌の刊行や、今後の活動を支えるための寄付募集などの呼びかけが行われています。

神戸映画資料館へのアクセスは、JR神戸線、神戸市営地下鉄の西神・山手線、海岸線の各線が乗り入れる新長田駅から徒歩約5分と、公共交通機関を利用して容易に訪れることが可能です。

神戸映画資料館は、貴重な映画フィルムや関連資料を未来に残すという重要な役割を担うとともに、多様な映画文化に触れる機会を提供することで、日本の映画史と現在の映画文化の両面を支える存在となっています。

もう一度検索