神界物語

神界物語とは

『神界物語』は、江戸時代に流布した神話・都市伝説です。物語の中心人物は、和歌山在住の医師、嶋田幸安と、紀州藩士の参澤宗哲です。宗哲は、平田篤胤の門下でありながら、幸安の不思議な力に惹かれ弟子入りしました。幸安は、鎮魂帰神によって神がかり状態になり、神仙界や幽冥界の様子を語り、人々の前世や未来を予言しました。また、独自の医術で病気を治癒し、霊験あらたかな薬を調合したとされています。

嶋田幸安と参澤宗哲の出会い

宗哲は、幸安が幽冥に通じているという噂を聞き、彼に師事しました。幸安は、九州の赤山（霧島山）に棲む清浄気玉利仙全君という神の導きを受けており、自らの力ではなく、神の言葉を伝えていると語りました。宗哲は、幸安の語る驚くべき出来事や異界の様子を詳細に記録し、『神界物語』としてまとめました。

神界物語の内容

『神界物語』には、神仙界や幽冥界の様子、人々の前世や未来、病気平癒の祈祷や呪術などが記されています。また、幸安が調合した薬は、霊験あらたかであったと伝えられています。宗哲は、幸安の言葉を忠実に記録し、全20巻に及ぶ大作を完成させました。

平田篤胤との関係

宗哲は、平田篤胤の門下でしたが、幸安の神仙思想に傾倒し、平田家とは袂を分かつことになります。幸安の言動は、平田家の逆鱗に触れ、写本は焚書され、宗哲は破門されてしまいます。

神界物語の再発見

『神界物語』は、明治以降、隠蔽され続けていましたが、大本教の機関誌で紹介されたことで、再び世間に知られるようになりました。その後、友清歓真によって、神界物語の一部が紹介され、その存在が広く知られることになりました。

幸安の神力

幸安の神力は、霊媒や口寄せのようなものではなく、鎮魂帰神による精神統一によって、幽冥界と顕界を自由に行き来する能力だったとされています。弟子である宗哲の誓詞を赤山の神に届けるために、宗哲の指を墨で突き、その指に腫れ物ができたという逸話も残っています。

『仙境異聞』との関連性

平田篤胤は、『仙境異聞』という書物を通じて、道教や神仙道に興味を持っていました。『神界物語』は、この『仙境異聞』と関連づけられることもあり、道教や神仙道の思想が、日本の宗教観や世界観に大きな影響を与えたことを示唆しています。

幽界真説について

『神界物語』には、補足として『幽界真図』という絵巻物があり、神界の様子が描かれています。また、ダイジェスト版として、『幽界真説』という書物も存在します。この書物には、神境快楽、邪鬼界、仏魔境、畜生界、仏法地獄極楽などについて、独自の解釈が記されています。

宗哲の著作

宗哲は、幸安の思想を広めるとともに、様々な著作を著しています。『新仮字乃定』『撰名式』『御諭文』『学生訓十箇条』『神拝詞』『設像辨』『軍法論』『学聖祭式』『感応教正訓』『神仙感応教』『古学聖御行状略記』『日文伝附書』などがあります。

まとめ

『神界物語』は、江戸時代に生きた人々の宗教観や世界観を反映した、非常に興味深い物語です。嶋田幸安という特異な人物を中心に、神仙界や幽冥界の神秘的な出来事が描かれており、読者を魅了します。また、平田篤胤との関係や、その後の再発見など、歴史的にも興味深いエピソードが多く含まれています。

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