神社合祀

神社合祀とは

神社合祀とは、複数の神社の祭神を一つの神社に統合、または既存の神社にまとめて遷座させ、他の神社を廃止する政策のことです。これは、主に明治時代末期に政府主導で行われました。

前近代の神社合祀

神社合祀の動きは、明治時代以前にも見られました。

岡山藩: 寛文5年（1665年）、岡山藩主の池田光政は、1万を超える神社を71社に合祀し、多くの寺院を破却しました。この背景には、排仏論を唱えた熊沢蕃山の存在がありました。
水戸藩: 寛文6年（1666年）、水戸藩主の徳川光圀は、多くの寺院を処分。また、天保元年（1830年）には、神儒合一を目指し、念仏堂や小祠などを破却し、一村一社制度を実施しました。
会津藩: 寛文7年（1667年）、会津藩主の保科正之は、山崎闇斎の影響を受け、神社再興と神仏分離を行いました。
津和野藩・長州藩: 天保13年（1842年）、長州藩の村田清風は、淫祠を廃止し、一村一社とする改革を実行。多くの寺社や仏像を破却しました。国学者の近藤芳樹は式内社以外を淫祠とみなし、岩政信比古は民衆の不安を批判しました。

明治時代の神社合祀

明治時代に入ると、政府主導による神社合祀が本格化します。

神仏分離令: 慶応4年（1868年）の神仏分離令により、廃仏毀釈が起こり、鹿児島県では全ての寺院が廃止されました。
国家[[神道]]の確立: 明治4年（1871年）には、神社が国の宗教機関と宣言され、国家[[神道]]の体制が始まりました。これにより、神職の人事権は国家が握るようになり、神社は国家の管理下に置かれることになりました。
社格制度: 同年、官社と諸社という神社の格付けが設定され、近代社格制度が始まりました。これにより、神社の格式が明確化され、国家による神社統制が強化されました。また、淫祠の定義がなされ、整理の対象となりました。
神社整理の方針: 明治5年（1872年）、教務省が神社の整理を担当し、衰退した神社などを廃合する方針が示されました。しかし、混乱が生じたため通達が出されました。
特選神名牒の編纂: 明治7年（1874年）には、特選神名牒の編纂が始まり、式内社などの調査が行われました。また、同年に神社統廃合を一時差し止める通達が出されました。
神社明細帳の作成: 明治12年（1879年）には、各神社の明細帳の様式が細かく定められ、祭神の由緒や口碑などが記録されました。しかし、その信憑性の判断は行政官に委ねられていませんでした。
社司の設置義務化: 明治27年（1894年）には、府県郷社や村社以下に社司や社掌を置くことが義務付けられました。

明治末期の神社合祀

明治39年（1906年）の神社合祀令以降、神社合祀はさらに加速しました。1898年から1916年の間に、多くの境外無格社や府県郷村社が消失しました。特に大阪府、滋賀県、奈良県、三重県での消失が著しく、全国的に見ても、神社数が大幅に減少しました。

目的: 神社合祀の目的は、神社の数を減らし、残った神社に経費を集中させることで、一定基準以上の設備・財産を備えさせ、神社の継続的経営を確立させることにありました。また、国家[[神道]]を確立し、地方公共団体からの公費供進を実現させるために、神社の数を減らす必要がありました。
神社中心説: 地方自治政策の一環として、神社を中心とした地域運営を目指す「神社中心説」が採用され、一町村一神社の基準が適用されました。
合祀の経緯: 1906年（明治39年）、内務大臣の原敬による勅令により合祀政策が進められました。その後、平田東助が強固に推し進めたため、1914年（大正3年）までに多くの神社が取り壊されました。

合祀反対運動

神社合祀は、氏子崇敬者の意に反して行われたため、反対運動も起こりました。特に、博物学者・民俗学者の南方熊楠は、合祀政策を強く批判しました。彼の主張は、敬神思想の弱体化、地域社会の衰退、文化遺産の破壊などを指摘するものでした。

合祀された神社の復祀

戦後、神社は宗教法人となり、戦前の国家[[神道]]体制は解体されました。合祀された神社の中には、復祀されたものも少なくありません。特に、合祀以前の崇敬基盤が残っていた地域では、復祀が比較的容易に行われました。

神社合祀の禍根と神社神道の分裂

合祀政策に対する反感から、神社神道の分裂も起こりました。京都府では神社本教が分離独立し、北海道では北海道神社協会が神社本庁と決別しました。

研究書籍・論文

神社合祀に関する研究は多数あり、その歴史的背景や影響について詳細な分析が行われています。

安丸良夫『神々の明治維新』
華園聰麿「明治期における神社の廃合の経過と影響」
西川順士「神社整理問題の史的考察」
森岡清美『近代の集落神社と国家統制：明治末期の神社整理』
Wilbur M. Fridell,Japanese shrine mergers, 1906-12 : State Shinto moves to the grassroots

関連項目

神道
国家[[神道]]
神道用語一覧
稲八金天神社
廃仏毀釈
神仏分離
神仏習合

脚注

(省略)

出典

(省略)

外部リンク

南方熊楠「神社合祀に関する意見」（青空文庫）
森岡清美「神社をめぐる住民感情と官僚的合理主義」

神社合祀は、単なる神社の統合に留まらず、日本の宗教観、社会構造、文化に大きな影響を与えた出来事でした。その歴史的意義を理解することは、今日の日本社会を考える上で重要な視点となります。

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